アカペラ審査の講評でよくお話する事&よくある質問と答え

アカペラ審査の講評でよくお話する事&よくある質問と答え
この記事は、「アカペラアドベントカレンダー2024」の18日目の記事です。

みなさんこんにちは、よっさんです!

6日目に書いた記事「音楽経験ないけど、アカペラアレンジに興味あるけど、よくわかんないけど、なんとかコードを理解したい人が助かるかもしれない記事。」がかなりの反響ありました。ありがとうございます…!まだ読んでいない方は是非読んでください🙆‍♂️

わたしは大学アカペラサークルの審査員をすることが多く、その際によくお話していることを記事にまとめてみました。

プロフィール

わたしは以下の企画を立ち上げ・運営しております。

  1. アカペラを活用した教育活動「アカペラ教育プロジェクト
  2. アカペラを学ぶお手伝いをする「アカサポ

つまりアカペラ×教育の活動をしている人間です。

①「アカペラ教育プロジェクト」では、大学教授や学校の先生と連携しながら、教育現場でのアカペラ活用を進めています。学校教育では総合的な学習の時間や音楽の授業に、社会教育では公民館や市民センターの講座で活用しています。

②「アカサポ」では、実績のあるアカペラ講師を集め、審査員やワークショップなどを請け負っております。講師陣には大学で音楽や教育の専攻をしていた、音楽や教育に関する仕事をしているなどの基準を設けております。

そもそも審査員とは?この記事で触れる「講評」とは?

多くの大学アカペラサークルライブでは、限りある出演枠をかけたサークル内オーディションが開催されています。例えば「出演希望するグループが30組いるけれど、出演できるのは10組だけ…」など。わたしはこういったオーディションの審査員をすることがあります。

一般的な審査では2種類の講評があります。

  1. 個別講評:グループの演奏後、採点と同時にグループ毎にテキストでお送りする講評。だいたい3~5分程度しかないのでかなり時間が無い。
  2. 全体講評:全グループの演奏後、サークル全体に向けてお話するもの。一言と指定されることもあれば、5分ぐらいと指定されることも。

この記事では大学アカペラサークルのオーディション審査員をする中で、個別講評、全体講評の際によくお伝えすることを列挙しながら、解説します。

ちなみに2024年度はわたし史上最多のご依頼をいただきまして、月1,2件ペースで審査をしております(ご依頼ありがとうございます!)

そもそも:普段のアカペラへの向き合い方

わたしは好きな人達と楽しく歌っているのが好きな人間です。

「大会で勝つ!」といったマインドはありません。…いや、正確に言うと「そりゃあ賞を取れたら嬉しいけど、それを目標に活動はしていない」ですかね。自由に楽しく歌っていて、もしも賞も取れたらラッキーだね!のマインドです。

大会で賞を取るよりも、ストリートライブで道行く人が足を止めてくれる方が嬉しいし、知らないおばあちゃんが「感動しました」って話しかけてくれる方が嬉しい(これまじで嬉しい)。老人ホームで手拍子しながら楽しんでくれる方が嬉しいし、知人の結婚式余興で新郎新婦、ご親族・友人に感動してもらう方が嬉しい。達成感あります。

結局何が言いたいのかというと、わたしは「競技アカペラ志向」をあまり持ち合わせていないということです。それを前提に本記事を読んでいただければと思います。

本記事では

  • 講評でよく言うこと
  • 講評後によくあるQ&A

の2ブロックにわけて書いていきます。

講評でよく言うこと

①講評はあくまでもヒントです、正解ではないです。

これは必ずお伝えしていることです!(過去、伝え漏れている方いたらスミマセン!)

賛否あれど「音楽に正解はない」ものだと思っています。
審査員によって、先輩によって、「Aにするべき」という人もいれば「Bにするべき」という人もいます。

だから講評をもらったときには、講評を「絶対的な正解」だと思うのではなくて、あくまでも自分たちにとっての正解を見つけるためのヒントだと解釈してください。講評を取捨選択して、採用するもの、参考にするもの、無視するもの…、と使い分けてください。

過去には「先輩にこのように歌ったほうがいいと言われて…」と先輩に言われたままに発声をして、喉を壊しかけている人や個性を失っている人にも出会ったことがあります、、、。かなしい。

さらに言えば、講評時間はとっても短い!個別講評はテキストベースでお伝えすることが多いです。ですから「本来Aと伝えたかったのにBと伝わってしまう」なんてこともよくあります。ですから講評が絶対的な正解だと思わないようにしてください。

さらにさらになんですが。

そもそも言われたことに全部従って、
指示されたままに演奏するのってつまらなくないですか!?

自分たちで「これだ!」と思える正解にたどり着くために、いろいろ試す時間が楽しくない???

自分たちで自分たちのやりたいように演奏できるのがグループ活動じゃないですか!!

(これテストに出ます。)

この章のまとめ講評はあくまでもヒントです、正解ではないです。
念の為補足とはいえオーディションの場では、審査基準が設けられています。選考通過のためには基準をクリアできるように程度工夫する必要はあります。やりたいことをやりすぎて得点稼げない…なんてことにならないようにバランス感は大切です。

②ちょっと堅苦しくないですか?それがみなさんのやりたいことですか!?

オーディションでは「10分尺」「1曲のみ」といったように、演奏時間に制限がかかることが多いです。時間内でMCがほぼできないので、“自分たちらしさ”を出しにくいものではあります。

…が!
審査をしていて、限られた時間でも伝わることがあるんです。

「このグループはみんな本当に椎名林檎が好きなんだな!」
「すげえノビノビ歌っているなあ!」
「このグループは超仲良さそう~~!」

という自分たちらしさ。

またその一方で

「ぎこちない動きしてるなあ」
「そんな堅苦しいMCしなくていいのに。不相応なMCでむしろ自分たちのハードルあげてるなあ」
「決められたセリフを言っている感強いなあ」

のマイナスイメージも伝わっちゃいます。

体感的にはやっぱり前者のようなグループの方が選考を通過します。

「本当にそれがやりたいことなの?自分たちらしさなの?」と感じるよくある例【自己紹介MC】

わかりやすい例として「自己紹介MC」があります。
例えば『ドライフラワー / 優里』を歌う1年生同期アカペラグループがあったとして、

わたしたちは“愛”をコンセプトに活動する1年同期アカペラグループです。私達のハーモニーが、失恋による後悔や寂しさ、虚しさいっぱいの貴方に寄り添えますように…。

みたいな自己紹介をするグループを最近良く見かけます。本当に多いです!(こういうMCはいつから増えたんだろうか…🤔)

そんなに無理に作り込まないで、

わたしたちは1年生同期で結成したアカペラグループです。リードボーカルの私が失恋した高2の当時よく聞いていた思い出の1曲、優里『ドライフラワー』を歌います。」

と言う方が、等身大でまっすぐでシンプルで、聞き手にはスッと伝わります

前者のような頑張って作り込んだMCを批判しているわけじゃないんです。でも前者のようなMCをしているのに、肝心のアカペラ演奏、所作や見た目がアンマッチすぎるグループが非常に多いのです。「型から入りすぎ」と言ってもいいもしれませんね。

もしかするとこういうMCが全国大会でウケが良いのかもしれないし、先輩たちを参考にしているのかもしれないし、経緯はよくわからないのですが、きっとそれは「一部の狭い世界でしかウケない文化」なような気がします。少なくともわたしには刺さりません。

ちなみに上級生のみなさん、これは1年生だけが対象じゃないですよ。

個性爆発させよう

もっと個性を爆発させて「この6人だからこそ、このバックグラウンドがあるからこそ、世界に1組しかないオンリーワンのグループなんだ!」というものがあると審査をしていてワクワクします。そして大体そういうグループは選考を通過します。誰かに倣って無理やりにつくった、着飾ったものはいりません(そういうのはどこかでボロが出ます)。

自分たちらしさを大切にして、やりたいことをもう一度見つめ直してグループ活動をしてみてください。きっとその方が、観客にとっても、自分たちにとっても、楽しいはずです!win-winです!(そして選考通過率も高いです)

この章の結論ちょっと堅苦しくないですか?それがみなさんのやりたいことですか!?
やりたいことをやった方がお客さんも自分も楽しいよ!

③表現を豊かにしよう!フレージング力を鍛えよう!

こんなことを言われたことがある人多いのではないでしょうか。

  • 音が平面で立体的じゃない
  • 表現のパターンが一緒
  • ボカロみたい
  • MIDIみたい
  • 強弱がない、ダイナミクスがない

これらをまとめて「表現力」という人もいれば、場合によっては「フレージング力」という言葉に置き換える人もいるかもしれません。ここでは上記の課題を解決するために、「表現力」のパターン(引き出し)を増やす方法を書いていきます。

デジタルを活用!音楽を視覚的に捉えてみよう。

まずは以下の動画を見てみてください。これらの動画では、音楽をデジタルで「見る」ことできます。音楽ですから聴覚をつかってパターンを身につけるのもよいのですが、視覚も併用するともっとよいです!

いずれの動画も冒頭30秒でBefore/Afterの紹介をし、その後に具体的にどこをどのように変更したのかを解説しています。Before/Afterで音が立体的になって、よりリアルで臨場感あふれて、心躍る感覚がわかると思います。

動画を見る前に!主にこんなところに注目しよう・音の長さ、休符がどのように変化するのか
・音の強弱、音量がどのように変化するのか
・音のつなげ方、どのように音をつなげているのか
・音の切れ方、入り方、アクセント

【A】無料音源でギターをリアルに打ち込むコツ

【B】DTM初心者はとりあえずこの動画と同じことやってください

fooやfu、wooといったコーラスの参考になります。

【C】無料音源でベースをリアルに打ち込むコツ

ベースパートのみなさんはマストで見てください。ゴーストノートや休符の使い方、チョーキングなどの技術もどんどん取り入れましょう!(わからない用語は調べてみよう!)

【D】無料音源だけで上手に曲を作るコツ

フレーズ毎にどの音を前に出すか、後ろに引くか、どのパートを表に出すか…。メンバー全員でのバランス感の参考にもなります。

少し変えるだけで雰囲気がぜんぜん違う

以上4つの動画からBefore/Afterの違いがわかりましたか?
ちょっと休符をつくるだけ、音をつなげるだけ、ズラすだけ、ちょっと工夫するだけで急に演奏が豊かになるんです。おもしろい。

これらの動画では楽器での表現パターンではありますが、もちろん人間にも流用可能です。そしてさらにいえば人間の場合は、息の量、音の勢い、音の切れ方、太い声なのか、細い声なのか、遠くに届く声なのか、なども調整ができます。調整用のツマミがいっぱいあるわけですネ。

【実践!】音量や音価の変化に気付けるようになったら次にやること

まずは上記の動画からBefore/Afterの違いが感じられるようになったら成長です!自分に拍手👏

音の変化を感じられるようになったその状態で、普段取り組んでいる楽曲を聞いてみてください。きっとピアノもバイオリンもベースもギターもドラムもリードボーカルも、フレーズごとに、1音ごとに、ちょっとした工夫でいっぱいのはずです。単音ロングトーンでも細かい変化が付いているはずです。

…どうでしょう?細かい工夫や変化に気づきましたか?

しっかり認識できるまで何度も聞いてみましょう。もしも変化に気付けるようになったらやっと演奏です。頭で、耳で、理解できるようになってから演奏です。着実に一歩ずつ前に進みましょう。

おまけ:「表現」はクレッシェンドとデクレッシェンドだけではない

表現をつけよう、ダイナミクスを意識しようというアドバイスに基づいて「クレッシェンド」や「デクレッシェンド」を意識しているグループは非常に多いです!それは素晴らしいことです。

…でもクレッシェンド/デクレッシェンドだけが表現ではないのです。表現のパターンを上記の動画から感じでいただければと思います。

補足「クレッシェンド」するフレーズばかりを意識するのではなく、その直前のフレーズも大事です。どのような流れをつくればクレッシェンドがより自然に、より映えるのか、より効果的になるのか、前後の流れも意識してみてください!
この章の結論表現を豊かにしよう!フレージング力を鍛えよう!
良質なインプットなしに、良質なアウトプットはできない。まずは音の変化、工夫に気付ける人になろう。

④楽譜に負けている!練習にアレンジャーを呼ぼう!

③にも関連するのですが「楽譜的にはここはスラーで横の流れが強調されるんだろうなあ。でも演奏にはそれが反映されていないなあ」というグループもよく見かけます。

わたしはこういうグループを「楽譜に負けている」と表現しています。

アレンジャーはきっと

「ここはストリングのイメージで」
「このフレーズの山は4小節目になる」
「このfooはもっと広く広く優雅に歌いたい」
「ここの9thは本当にさり気なく」

などなど、何らかのイメージを持ってその音を、そのフレーズを、そのシラブル(スキャット)を選択しているはずです。

まずはその意図をしっかり把握して演奏できるように、楽譜に負けないように、普段の練習にアレンジャーを呼びましょう。都度解説してもらいながら、指摘してもらいながら練習しましょう。

外部の著名なアレンジャーに編曲を依頼している場合、普段の練習にアレンジャーを呼ぶのはちょっと勇気がいるかもしれませんね。もしかすると別途料金が発生するかもしれません。

でもせっかくいい楽譜があるんだから、それぐらいはしたほうが絶対にいいです!相談するのはタダ!積極的にアレンジャーを練習に呼びましょう!

この章の結論楽譜に負けている!練習にアレンジャーを呼ぼう!

講評後によくあるQ&A

Q:発声に悩んでいるんですが、どう発声したらいいですか。

A:発声はやり方次第では身体(楽器)を傷つけてしまう可能性もあるので慎重にならないといけません。先輩や審査員の意見を参考にしつつも、やっぱり一度はプロ=ボイトレに通うことを強くおすすめします。ボイトレ体験だけでもよいです。最近ではアカペラ経験のあるボイストレーナーもちらほら居ます。困ったら知人のボイストレーナーも紹介できます!お声掛けください。

Q:声が特徴的で馴染まないんです。どうしたら馴染む声になりますか。

A:うーん。でも、声を馴染ませようと自分の声質を変えすぎるのもつまらなくない?アカペラなんだし。いかに声を溶け込ませて1つになるのかという合唱ではないです。むしろ特徴的な声をぶつけましょう!

特徴的な声も個性です。武器です。あなたとあの人とこの人だからこそのコーラス隊の音ができるんです。無理に馴染ませようと個性を消してしまっては、この3人でコーラス隊をする意味がありません。他の人がコーラスしてもいいじゃんってことになっちゃう。

わたしの経験則からすると、声が馴染まない原因は、声質じゃないことが多いです。③④でお話したような演奏の表現や音のイメージの共通認識が取れていないか、和音の音量バランスが悪いかです。

別解として「この特徴的な声に他の2人が合わせろよ!」という考え方もできますね。みんなで寄り添い合いながら作りましょう。

Q:ボイパにアドバイスください / 演奏にアドバイスください…など

※これは個別にお伝えすることが異なるので割愛します。

最後に

Q&Aについては個別にお話することが大半なので、この記事で紹介できるものがありませんでした…🙇‍♂️
全体的にやや抽象的なお話ばかりでしたが、参考になるところがあったらいいなあ。

大会で勝つ!という勝負志向の方にはあまり参考にならない情報だったかもしれませんがご了承ください。

ただ!
忘れないでくださいね。

この記事で書いた内容はあくまでもヒントです!みなさんにとっての正解ではありません!

取捨選択してよきアカペラライフを👏👏

追記:宣伝します

わたしが運営するアカサポには、たくさんの信頼できる仲間たちがいます。全国大会でいつも審査員をしているような大会慣れしている講師もいます。ワークショップや審査員、ボイストレーニングなどの各メニューを対面・オンライン問わず受け付けています。講師プロフィールも見れますので是非ご相談ください!

わたしのプロフィールもあるのでビビッと来たらご相談ください!