2020年度以降、新型コロナウィルス(以後:コロナ)の影響で、大学アカペラサークルは活動のあり方を大きく変えざるを得なくなりました。そんな状況を複雑な想いで見つめていたのが、2020年3月に卒業した代のアカペラーたちです。「自分たちと同じように、後輩も4年間のアカペラライフを楽しんでくれるはず」と思っていたところにやってきたコロナ禍。あれから2年、この春から社会人3年目を迎えるタイミングで、全国各地の「2020年卒世代」が参加した大規模リモートアカペラ動画が公開されました。
AJP編集部では、今回のリモアカ企画で中心となった4人のメンバーにインタビューさせて頂き、企画へ込めた想いや、今現役で頑張っている大学生アカペラーに伝えたいことなどをうかがいました。既に動画を観た人も、これから観る人も、動画をより深く味わえるお話を聴くことができたので、最後まで読んで頂けると嬉しいです!
目次
ゲスト&インタビュアー紹介
2020年卒リモアカ企画メンバー
玉川大学ハモリアソビ OG。学生時代からJAM、アカスピなど数々のアカペライベントの運営を務めてきた。
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龍谷大学mix-voice OG。学生時代は演者としてだけでなく、KAJa!運営としての顔ももった。
大阪大学inspiritual voices OB。学生時代はJAM、アカスピなど数々の大会で決勝進出。優勝経験もあり。現在もPLUS Unison.等で活躍中
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インタビュアー(AJP編集部)
AJP編集部員。筑波大学アカペラサークルDoo-Wop所属。現在大学3年生。
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ちょっとしたノリから企画は生まれた
たまたまSNSで集まったメンツでLINEグループを作った
今回の同期リモアカ企画は、どんなきっかけで立ち上がったんでしょうか?
もともとClubhouseで同期のアカペラーとよく喋っていた時期があって、その流れから固定化したメンバーでLINEグループができたんです。で、2021年12月6日、ソラマチアカペラストリートが終わった直後に「何かやろうよ!」と私が提案して、すぐに動き出しました。
そのメンバーは、大学時代のサークルも、今住んでいる場所もバラバラだったけど、リモートアカペラならできるし、なんならもっと大人数でもできそうだね!となって。
地道に声をかけて120人が集まった
まず全国各地域の、大学時代にイベンターや渉外をやっていた同期アカペラーに声をかけて、1日で15人集めました。その勢いでオンライン会議をやりだして、選曲とかパート分けとか、コーラスの募集をどうやってかけるかなどを打ち合わせしていきました。
動き出すの速かったよね!(笑)
すごいですね!メンバーはトータルでどのくらい集まったんでしょうか?
地道に声掛けをしていって、最終的に120人ぐらいになりました。
すご、、、
「懐かしい!よく聴いたし歌ったよね〜」みたいにみんなで共有できるエモさ
選曲はとても悩んだと思うんですが、選曲した理由を教えてください!
アイドルソング中心のメドレーになっていて、合計7分弱の大作になりました!
♪Weeeek / NEWS, GReeeeN
♪チョコレイトディスコ / Perfume
♪道 / EXILE
♪愛しのナポリタン / トリオ・ザ・シャキーン
♪Gee / 少女時代
♪恋☆カナ / 月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。)
♪Ultra Music Power / Hey!Say!JUMP
♪Ho!サマー / タッキー&翼
♪抱いてセニョリータ / 山下智久
♪10年桜 / AKB48
♪Monster / 嵐
♪陽は、また昇る / アラジン
選曲については、まずリードボーカルを男女バランス良く配置したくて、そう考えた時に、アイドルの曲はどういう系統の声でも当てはまるような多様さがあって良いんじゃないかと思いました。
あと、私たちの世代が小学生ぐらいの頃ヒットした曲を中心に選びました。「懐かしい!よく聴いたし歌ったよね〜」みたいにみんなで共有できるエモさがあると思ったからです。
(心の声:取材後に当時のLINEグループのスクショを見せてもらいましたが、みんな楽しそうに、そして真剣に話し合いをしていて、この瞬間もまた最高にエモい時間だっただろうな~~~と思いました。同期っていいね!)
新型コロナウイルスの影響で卒業ライブが軒並み中止になったことがエネルギーに
今回の企画のテーマみたいなものってありますか?
まず自分たちの代のアカペラ生活が、最後にコロナで中途半端な形で終わったので、改めて区切りをつけたかったんです。
確かにコロナで世の中全体がどうする!?という雰囲気でしたね。私もみなさんの同期バンド「ho-op」の卒業ライブに出演予定だったのですが、結局中止になってしまいました。
ここにいる皆さんはどんな状況でしたか?
私はもともと2月中に卒業ライブを予定していたのでギリギリできました。ただ、自分が観客として楽しみにしていた3月のイベントはなくなってしまいましたね。
僕は3月8日に主催のラストライブが決まっていたのですが、中止になってしまいました。記念のCDも作っていたんですけど、たくさん余ることになり、今も在庫を抱えてます…。
僕は有観客のライブはできず、可能だったイベントは配信でやりました。シンプルにライブできなかったという残念さに加えて、キャンセル料などのお金の問題もつらかった。何もできないのにお金を払うむなしさを感じました。
イベンター目線で、ゆうゆさんはいかがですか?
私は卒業記念の同期ライブを関西関東2会場でやる予定でした。関西は2月だったのでなんとかできたんですが、3月の関東は中止に…。都内の大きい会場を抑えてしまっていたので、支払いでいろんな人に助けてもらいました。
プレイヤーとしても、イベンターとしても、リスナーとしても、やはりみなさん苦労されたようですね…。
4年間のラストが不完全燃焼で終わってしまったんですね…。だからこそ今回の企画に120人も集まったのかもしれないですね!
そういう側面は大きいと思います。
動画を公開するまで企画のことは秘密にしたかった
今回のリモアカ企画で大変だったことは何でしょうか?
まず連絡ですね。動画を公開するまで企画のことは秘密にしたかったので、連絡のルートをすごく細かく設定して、いろんなメンバーに協力してもらっていたんです。
なるほど!同期だけが揃っているLINEグループって意外と少ないかもしれないですね。
ミックスを担当した自分としては、リモアカのレコーディングのやり方を伝えるのが大変でした。多くのメンバーが未経験で、録り直してもらうこともあったんですけど、みんな頑張って送ってくれました。あと映像編集のわだっぺ君も大変だったと思います。
今回の企画は振り付けもあって、特に僕らベースやパーカスは、口でリズムを刻みながら踊るのがすごく難しかったです(笑)。
でも同期のみんなが頑張って踊っている動画を見ているのは面白かった(笑)
(笑)
同期っていいなと思えるタイミングがいっぱいあった
逆に企画をやって良かったと思うことはどんなことでしょうか?
友達が増えました。
たしかに!
これまでSNSで眺め合うだけの「知り合い」だった同期が「友達」になって、関係が深まったんですよね。
そうそう。同期っていいなって思うタイミングがいっぱいありました。コロナの影響でぬるっと卒業した人たちが集まった同窓会みたいな感じで、「このまましゃべることがないんだろうな」がなくなりましたね。
企画運営が大変なのはある程度予想ができたことだったし、それよりも良かったことが多かったです。振り付けをみんな頑張ってやってくれて、動画チェックする時もその様子が愛おしくて(笑)。お互いの現役時代を知っているからこその楽しさをすごく感じました。
やっぱり学生時代のアカペラは楽しかった!
アカペラとの出会い
皆さんの学生時代についても聞いてみたいのですが、皆さんがアカペラを知って、アカペラを始めたきっかけは何でしたか?
僕は高校まで野球をやっていたんですけど、元々歌が好きで大学から歌を始めたいと思っていました。入学して音楽系のサークルをチェックしたんですが、軽音サークルは音のデカさにビックリしてしまって(笑)。その後アカペラサークルを見た時に、先輩がめちゃくちゃ上手くて楽しそうに歌っていたので、自分も上手くなれるかもと思って入りました。
まず私が小学生のころに母がRAG FAIRが好きで、さらに従姉妹がアカペラサークルで部長をやっていたというのがあって、学生アカペラを高校生の頃からみてました。
それで私も入学予定だった大学の学祭で、ハモリアソビにお気に入りのヤロバンを見つけて(笑)、入会を決めましたね。
私はもともと音楽や歌うことが好きで、幼少期から音楽系の習い事をしたり、中学では吹奏楽部に入ったりしていました。大学のサークル新歓も音楽系を見ていたのですが、アカペラ体験会でハモった感覚が、初めての体験で新鮮で気持ち良くて。その後の新歓お花見会で、生声1つでパワフルに歌っている先輩を見てさらに感動しました。
僕は小中高は野球をやってたんですけど、大学では違うことをやろうと思っていました。で、受験勉強中にDaiSPiを見て、iNSPi吉田圭介さんのベースにハマったんですね。塾の帰り道でベースを口ずさむようになり(笑)、そのままアカペラを始めました。
アカペラサークルを通して学生時代に得たもの
皆さんの大学サークル時代で、特に印象に残っている出来事や、「これを頑張った」みたいなこと、そしてその経験から後輩に伝えたいことはありますか?
僕はJAM2019ですね。それまでは大会には縁がなかったんですけど、この時4年間が報われたというか、学生生活の中でもとても思い出深いものになりました。僕の考えとして「大会が全てではない」というのはあるんですけど、出たことはすごく良い経験になったと思います。
3年生の時のアカスピで、パインアメがEXで優勝したことです。実は僕もそれまでは大会には出ないタイプで、優勝できたのはまぐれな部分もあると思うんですけど(笑)、お客さんが温かくて、歌うのが楽しかったですね。後輩に伝えたいのは、バンドは仲良くできたほうが良いということかな。強い人達で組んだグループもよかったけれど解散も多かった印象がある。パインアメは元々「余り者」の集まりだったけど、すごく楽しかった。失敗しても反省しながらみんなで焼き肉を食べたりして。バンドの雰囲気って大事だなと思います。
私は KAJa!の運営ですね。裏方の大変さを知って、自分のサークルに持ち帰って活かすこともできたし、演者さんに声をかけてもらえて、充実感がありました。人との繋がりもできたし、アカペラに対してだけではなく自分の視野が広がりました。後輩に伝えたいのは、自分の興味があることは進んでやっていいと思うし、学生のうちは失敗しても問題ないということ。迷ったらやらない後悔よりもやる後悔を選んでほしいですね。
アカペラの良いところは、人との縁が繋がりやすいこと。当たり前のように他大生と交流できる状況って、アカペラ以外ではなかなかないんじゃないかな。あと、私の場合はもともと裏方が好きだというのはあったけれど、歌わなくても活躍できるところは絶対にあるというのは伝えたいですね!
今コロナ禍で頑張っている大学生へ
いやあみなさん素敵なコメントだ・・・!
改めて、今コロナ禍で頑張っている学生アカペラーへ向けて、メッセージをお願いできますか?
学生のときは限られた時間に焦ると思う。「サークルの4年間でどこまで頑張れるか」はとても大事だけど、アカペラできるチャンスは一生あるということも忘れないで欲しいです。
僕はコロナがなければ「遠征に行こう!」と言いたいんです。コロナになってから遠征がしづらくなったけど、行けるようになったら借金してでも行ったほうがいい!って思うくらいオススメです。あと、今はオンラインで全国のアカペラーと交流できるチャンスが広がってるので、ぜひ活かしてほしい。繋がりはめっちゃ大事です!
いい意味で界隈が狭いんですよね。「アカペラーなら即友達」という安心感があって繋がりやすい世界なので、すぐリモアカとは行かなくても、普通にみんなでしゃべるとかすると良いと思います。その交流がいつか何かに活きると思います。そしてアカペラーと繋がれる場所はサークルの中だけじゃないので、外に飛び出すのもOKです。
大会に出たい人向けに言うと、今は対面アカペラがしづらい状況でも、個人練習がめっちゃできるし、無限にネットで検索して勉強もできるはずなので、インプットを増やす大チャンスだと思います。先が見えないからしんどいかもしれないけれど、アカペラできるようになった時に今インプットしたことがきっと役に立つので!
同期っていいな!アカペラっていいな!
最後に、今回のリモアカ動画を観た(これから観る)人に向けてメッセージをお願いします。
「この代すげぇ」って思ってほしい!そして、私たちの同期が現役時代に輝いてた動画がたくさん残っているので、それも探ってみてほしいです!!!!もちろん今も活動してる同期もいるので、ぜひチェックしてください!!
「同期っていいな!」とか「やろうと思えばなんだってできる」みたいなのを感じてもらえると嬉しいですね。
動画の概要欄にもみんなの想いが込められているので、ぜひ読んでほしいです。
人が集まるとこんなすごいことができるんだっていうのを観てほしいですね!
皆さんの想いを聞いて、やっぱりアカペラっていいな!って思いました。今日はありがとうございました!
編集後記
自分は、JAM2021スタッフを務めたときに当時代表だったゆうゆさんと知り合いまして、そのご縁で今回のインタビューが実現しました!
いつもながら、ゆうゆさんの行動力には驚かされます!!
またお話をきいていて4人それぞれ理由が違えど、「アカペラに出会えてよかった」という思いが伝わってきて、インタビューをしている自分も、自然と幸福感を感じました。
120名のアカペラ、できちゃうんですね(笑)とにかく凄いです!!!
本当に本当に素晴らしい企画ですね!ノリから始まったとはいえここまで形に残せるというのはなかなか難しいこと。
インタビューしているときにみなさんが本当にキラキラとしていて、仲が良い様子も伝わり、楽しそうでした。私も同期だったらどれだけ楽しかっただろうか!!
大学卒業とともにアカペラを離れてしまった、アカペラができなくなった方も多いと思いますが、友人の結婚式など、ふとしたきっかけで歌うタイミングはたくさんあります。また仲間たちと楽しく歌う日が楽しみですね。