【特別インタビュー】『SHIBUYA A CAPPELLA STREET』最優秀バンド「窓の満月」

【特別インタビュー】『SHIBUYA A CAPPELLA STREET』最優秀バンド「窓の満月」

本記事はアカペラ総合メディア「ハモニポン」の閉鎖に伴い、AJP編集部に移管された記事です。一部表示が乱れておりますがあらかじめご了承ください。

6月23日(日)、東京・渋谷を舞台にしたストリートアカペライベント、『SHIBUYA A CAPPELLA STREET』(通称『渋アカ』)が開催されました!

昼は渋谷ヒカリエおよび渋谷ストリームにてストリートライブが行われ、オーディエンスによる投票をもとに、夜には優秀バンドによるコンテストを開催。

そして、見事「最優秀バンド賞」に輝いたのは「窓の満月」の皆さん!

今回の記事では、激戦を制した彼らの今の心境や、普段の活動の様子、今後掲げている目標などをインタビュー。
社会人グループということもあり、残念ながら全員揃ってのインタビューとはならなかったのですが、男性メンバー4人が仕事の合間を塗って熱いお話を聞かせてくれました!

「最優秀バンド賞」に選ばれた今の心境

——あらためて、このたびは受賞おめでとうございました!

一同:ありがとうございます!!

——ステージを拝見していて、正直どこが最優秀バンド賞に選ばれてもおかしくないくらいに実力派ぞろいのイベントだったと思いますが、結果発表の時はどのようなお気持ちでしたか?

たかこ:そうですね、とにかく「驚いた」の一言に尽きますね!

しゅん:本当びっくりしました!正直、賞とかは狙ってなかったんですよ。今日はいないけれど、女性メンバー2人も「え?嘘でしょ?え?マジで?」とうろたえていました(笑)

けんた:そうそう、歌う前は「ただ楽しく歌おう」と思っていて、賞がどうとかは考えてなかったですね…。

——そうだったんですね。たしかに夜の渋谷ストリームホールでのコンテストでは、楽しそうに歌うみなさんがひときわ存在感を放っていたように思います!曲が終わって退場した後も、ずっと会場がざわざわしていました。

しゅん:いや〜あれは気持ちかった。

けんた:まあ、狙っていなかったからこそ楽しめたというのはあると思います。

ブラザー:あとは単純に、会場がよかったし、お客さんがたくさんいたことも楽しく歌えたポイントじゃないかな、と思いますね。

これまでどういった練習を重ねてきたか

——とはいえ、今回「最優秀バンド賞」を受賞された裏側には、普段の活動における積み重ねがあったかと思います。練習の中で特にどういったことにこだわっていた、などはあるのでしょうか?

けんた:そうですね…一つ挙げるとすれば、よくバンクリ(バンドクリニック)をしてもらっていました。

しゅん:あとはライブが終わった後にお客さんにコメントをもらうようにしていましたね。お世辞とかではなくて、辛口のやつ。僕たち男性陣は大学からアカペラをやっているメンバーなのですが、そういったプライドは捨ててやっていました。

たかこ:特にバンクリをいろいろな方にお願いすることは意識していましたね。誰にお願いするかによって、指摘されるポイントが全然違うので。例えばハーモニーに強いバンドで全国大会に出た方だと、パートごとの音のバランスとか、いかにしてハモるか、みたいな話をするじゃないですか。一方でボイパがとても上手い方にバンクリしてもらうと、リズムやノリをこう作るべき、みたいな指摘をもらえる。各々得意分野があるので、そのいいとこ取りをしていました。

——では逆に、「今自分たちの課題は〇〇だからこの方にバンクリしてもらおう」といったこともあったのでしょうか?

ブラザー:そうそう!たまたまライブで聴いたバンドのアレンジがとても良くて、終わってから「誰がアレンジしているんですか?」って聞いて、そのアレンジャーの方にバンクリをお願いしたこともありました。バンクリって「とりあえす受けてみよう」という人たちが多いと思うんですけれど、「この講師からはこういうポイントを学ぼう」と目的意識を持ってバンクリを受けることが大事だと思います。

「目的意識を持つことが大切」と語る、たかこさん(左)とけんたさん(右)

たかこ:学生時代と違って、やっぱり社会人バンドって集まって練習する時間がなかなか取れないんですよ。メンバーごとに休みも違うし、休みを合わせても月に2回しか練習できないとか。さらには出張とか仕事でトラブルが起きたとか、突発的に練習に行けなくなってしまうこともある。だから目的意識を持って練習しないと時間がもったいないんですよね。次回のライブがいつあって、練習できるのはあと何回だから、今日はこういう練習にしよう、みたいな。

けんた:練習後も、ご飯に行って話すことなどがほとんどできないので、代わりに練習日誌をつけています。帰りの電車の中で「今日の練習ではこういうところができた」「こういうところが課題だった」ということを各々がLINEグループのノートにまとめて共有し、1回の練習を着実に積み重ねていくことを意識していますね。

バンド内での目標の立て方

しゅん:目的意識の話と近いんですけれど、学生時代との違いとして「終わりがない」ということも大きいと感じています。大学生だったら4年間で「卒業」というリミットがあるけれど、社会人バンドにはそれがない。終わりがないからふわっと活動していたらいつまでも惰性で続けてしまうと思うんです。だからこそ、自分たちで「これを達成したい」という明確な目標を作ることで、モチベーションの維持にも繋がるし、活動の質が全然違ってくると思いますね。

——たしかに、転勤や海外赴任といったことがなければ、良くも悪くもいつまでも続けられてしまうとも言えますよね。一方で、ひとえに目標と言ってもメンバーによって目指したい方向性が全然異なると思うのですが、みなさんはどのようにしてバンドとしての目標を決められているのでしょうか?

ブラザー:僕たちがやった方法だと、一度全員で集まって、各々が達成したい目標を全部書き出して、それを「目標達成までにかかる時間」「目標達成の難易度」の2軸をもとに4象限に分けて整理しました(下図)。

けんた:きっかけはそれこそ「惰性で活動しそうになってしまっていた」ということなんですが、4ヶ月くらい連続でライブが続いて「俺たちって何を目指しているんだっけ?」ってなった時期があったんですよ。例えば全国大会出場を目標にしようか、という話は出たんですけれど、「もしそれを達成しちゃったらどうするの?また迷走するの?」という話になって。だから、「このライブに出る」とか「優勝する」とかではなく、もっと別の観点から目標を決めようという話になったんですよね。大きなところだと、「自分たちのCDを作る」とか、「メンバーそれぞれの出身地で歌う」とか。

しゅん:先日放送された「ハモネプ」もそうだと思うんですけれど、特に学生のうちは大会に出ることが全てという考え方が多いと思います。一方で僕らは社会人になって、時間のない中で活動したりだとか、自分の地元を離れて活動したりしているからこそ、こういった目標が出てくるんでしょうね。

たかこ:まぁ学生時代のやりかたも尊いものですけどね。限られた時間でどこまで勝ちあがれるかということも、大事にしていいと思います。

けんた:個人的に思うのは、学生時代にアカペラをやってたけれど社会人になったら続けないという人がまだまだ多いのは、モデルとなる社会人バンドがいないからだと思うんですよ。でも中にはきっと「社会人になっても続けたい」と思っている人はいるはずなので、「一生続けられる趣味」としてこういった続け方もあるんだよ、というのを知ってもらえると嬉しいですね。

スターがいなくても、「一緒にやりたい」と思える仲間だから続けられた

——ちなみに、皆さんはどうして社会人になってもアカペラを続けようと思ったのでしょうか?

しゅん:単純に好きだからというのもあるし、続けられる環境があったからですかね。

けんた:そうだね、好きだったというのは大きい。

たかこ:もはやそれだけな気がするな。

一同:(笑)

——特に東京だと、アカペラを続けたい人の受け皿となる社会人サークルも多いですよね。

たかこ:受け皿ももちろんだと思うんですけれど、僕がブラザーさんに誘われて入った「オトナリ」というサークルは、まず音楽を楽しもうという人たちが多いし、そもそも人として大好きな人もたくさんいたんです。そういった仲間がいるからこそ、もっとここでいろんなことやりたいな、という気持ちに繋がった気がします。

——アカペラが好きだという気持ち、アカペラをやる場、一緒にやる仲間という3つがあったからこそ続けている、ということなんですね。

けんたさん曰く、「このメンバーじゃなかったら続けていない」とのこと。

けんた:そうですね。だから「窓の満月」もこのメンバーじゃなかったら続けていないと思います。

たかこ:メンバー間のバランスがいいですよね。それぞれの、音楽的な視点とか、バンド運営の面でも役割が分かれているし、キャラもちゃんと分かれている。

しゅん:実は僕、結成してから1年半くらいは、「ちゃんとアカペラやりたい」「やるからには音楽的に上達したい」と思っていたんですけれど、ある時を境に、「上手くなくても結果残さなくても、みんなで集まれればいいな」と思うようになったんですよね。学生の頃にもそういうバンドがあって、「音楽やるんや俺ら!」「そこ音外してるじゃねえか!!」という感じではなく、練習中にミスがあっても「あっはっは」って笑えるようなバンドだったんですね。窓の満月もいつの間にかそういった、「集まることそれ自体が嬉しさとして感じられるようなバンド」になっていたんですよ、個人的には。

——でもその先で、こういった結果に繋がったというのは大きな意味がありますよね。

しゅん:はい、とても嬉しいです!

ブラザー:競技としてやるというか、「上達することが全て」という考えをある意味超越したところでやっていた結果、振り返ってみたら自分たちが思う「いい音楽」を届けられるようになっていたという感覚はあります。

しゅん:正直、僕たちって上手い人を集めて組んだグループではないんですよ。

たかこ:「こいつはスターだ!」と言えるほどの、飛び抜けた人がいない。みんな一般人で、めちゃくちゃ歌が上手い人も、めちゃくちゃパーカスが上手い人もいない。かといってめちゃくちゃ音楽理論に精通しているみたいな人もいないし、だからみんながそれぞれ自分の得意分野を少しずつ持ち寄るみたいなところはあります。

しゅん:そう、だから考えたんですよね、「窓の満月」の強みってなんだろう、って。

バンドとしての1番の強みは「アレンジ」

しゅん:結局、一番の強みはブラザーさんのアレンジだと思うんです。

——たしかに「渋アカ」で披露されていた「心の瞳」も、ラストでいくつもの曲が折り重なって、感動的なアレンジでしたね!

ブラザー:「窓の満月」のアレンジの強みは、1つはメッセージ性にあると思います。以前自分のブログに書いたことがあるんですけれど、アレンジャーだけがアレンジを作るのではなくて、メンバー同士でアレンジを作っているからだと思うんですよね。もう1つの強みは、構想のオリジナリティです。

——構想のオリジナリティーですか。

ブラザー:はい。アレンジする楽曲を、原曲どおりで完結させるのではなく、「そこに本当はどんなメッセージが込められているのか」をもとに構想を作っています。「その歌手がどういう気持ちでこの曲を作ったのか」という隠れたメッセージを自分たちなりにまとめて伝えたい、という思いがあり、ほぼオリジナルのメロディーも使って曲の構想を作っているので、構想だけは他のバンドでも負けないぐらい力を入れてますね。そういったところはやはり僕らのアレンジの強みであって、バンドとしての強みでもあるんじゃないかなって思います。

——メンバーのみなさんから見て、ブラザーさんが書くアレンジはどういった特徴があるのでしょうか?

ブラザーさん(奥)のアレンジの魅力について話すメンバー

しゅん:「その曲がどういう曲か」をすごく真剣に考えられているアレンジという印象がありますね。前に彼のノートを見せてもらったんですけれど、「どういう思いで書かれた曲か」や、「どういう情景か」といったことがびっしり書かれていました。

けんた:なんというか、音符に意味を持たせようとしているんですよね。

たかこ:僕の印象なんですが、奇をてらった和音やノリとかで魅せるのではなくて、曲の構成とかフレーズ感、曲に一貫してあるストーリー性とかで魅せてくるようなイメージです。

けんた:具体的な技法で言うと、ユニゾンがめっちゃ多いです、あと、力の入ったアレンジには、絶対にオリジナルフレーズが入ってきます。

たかこ:「心の瞳」でも「ぼくが君を守るから。どんな時も君を愛してる。ずっとずっとぼくがそばにいて、君をみつめれば、心の瞳で」というオリジナルの歌詞が出てくるんですよ。

しゅん:その歌詞が出てくるのも、「心の瞳」という曲を、すっごく深くまで分析した結果、「自分だったら原曲に何をどう付け加えるか」ということを考えているんですよ。本当に、気持ち悪いくらい考えています、彼は(笑)

——ブラザーさんのアレンジへのこだわりは、メンバーの皆さんからも一目置かれているんですね。

ブラザー:そうみたいですね。まあこれ以上アレンジの話で尺を使ってしまうも申し訳ないので、詳しくは僕のブログ「ブラブロ」をご覧ください、ということで!

一同:(笑)

今後「窓の満月」が目指していること

——先ほど「社会人バンドは終わりがない」という話もありましたが、仮に「これを達成できたらもう解散してもいい」と思えるようなことってありますか?

ブラザー:なんだろうねー。

けんた:ええ、難しいな。

ブラザー:たぶん、解散という概念がそもそもないんだろうなと。僕はないです。解散するときは死んでるよね。

たかこ:うん、ないな。

けんた:本当に辞めざるを得ない事情がない限りは続く気がするなあ。

しゅん:あの、僕の中ですごい強いものがあるんですけど…。僕、カバー曲ってあまり好きじゃないんですよ。

——好きじゃない、と言いますと。

「オリジナルソングだけでライブをやりたい」と語るしゅんさん

しゅん:音楽をやるからには、自分たちだけの音楽を作りたくて、今ちょうどオリジナルソングを作っているんですよ。だからオリジナルソングだけで主催ライブをできたら、僕は解散でいいと思います。それぐらい音楽を追求して、みんなが自分のバンドを好きになって、「自分たちの曲です」って言って、主催ライブをドンってやって、お客さんが「行きたい」と思ってくれるようなバンドなったら…僕は死んでもいいです。

けんた:「辞める」とかじゃなくて「死んでもいい」なんだ(笑)

一同:(笑)

——ちなみにその曲はしゅんさんが制作中なのでしょうか。

しゅん:僕が曲として一応作り上げて、ちょうどブラザーさんの方でアレンジをしてもらっています。

——アレンジはやはりブラザーさんの担当なんですね。

しゅん:そうです!今「窓の満月」の強みはブラザーさんのアレンジにあるから、アレンジは自分でやるんじゃなくてブラザーさんに任せたかったんです。

——先ほどのお話にあった「得意分野を持ち寄る」ということですね。

しゅん:はい。僕が曲を作る、それをブラザーさんがアレンジする、そしてできたものをけんたさんが客観的かつピンポイントで指摘してくれる。この3人が中心になって、発信して、作って、意見をもらう、というイメージなんですけれど、メンバーの強みがちょうど良いバランスで活かされているのかなと個人的には思っていますね。

ブラザー:確かに綺麗なサイクルが回っているね。

——やはり、「ずば抜けてここが優れている」という人がいないからこそ、お互いの強みを重ね合わせて、結果それが大きな力になるということなんですね。

しゅん:正直「ずば抜けた人がいない」というのは自分自身コンプレックスに感じていたんです。でも今回こうやって結果として現れたから、自分たちの活動を振り返ってみると、「今までしてきたことは間違っていたわけじゃなかったんだ」と感じられて、ホッとしました。

ブラザー:たしかにそれはあるね。

しゅん:だから今後の活動は、ブラザーさんが4象限にまとめてくれた目標を、一つでも多く埋められるように頑張っていくことですかね。まずは男性4人が痩せることから始めないと!

けんた:それ最難関のやつじゃん。「時間がかかる」かつ「難しい」(笑)

——全部達成するのは長い道のりになりそうですね(笑) 本日はありがとうございました!これからも頑張ってください!!

※写真左から、たかこ(Bass)、しゅん(Lead/Chorus)、けんた(Lead/Chorus)、ブラザー(V.P.)

「窓の満月」のみなさんのインタビュー、いかがだったでしょうか?

「ずば抜けた能力やカリスマ性のあるメンバーがいない」という話がありましたが、残念ながら今回お話を聞けなかった女性メンバー2人は、なんと社会人になってからアカペラを始めたそうです!

初心者がいたり、練習時間がなかなか取れなかったりする中でも、お互いの得意なことを重ね合わせることで、やがて自分たちの音楽を届けられるようになる。そうして積み重ねていった結果、「気がついたら目に見える実績に繋がっていた」という彼らのストーリーに、希望をもらった方も多いのではないでしょうか。

「窓の満月」の直近の出演情報!

そんな「窓の満月」の次なるステージは、8月に吉祥寺で開催される「夏ペラFESTIVAL2019」!

夏ペラFESTIVAL 2019
◆2019/08/10 Sat.
◆OPEN 10:15 / START 10:30
◆@吉祥寺ROCK JOINT GB
◆Ticket ¥900 / Drink ¥600
※学生は学生証の提示でTicket無料

予約はこちら

朝10:30から夜の8:30まで、総勢48組の社会人バンドが出演する豪華なライブとのことです!
※「窓の満月」は第4部に出演

これからも「窓の満月」のみなさんから目が離せませんね!!

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窓の満月(まどのまんげつ)

社会人アカペラサークル「オトナリ」所属の混声6人バンド。
東京都内を中心に、全国各地のアカペライベントに多数出演。
その他ミュージックビデオ制作やYouTubeでの動画投稿など、幅広く活動している。

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