【インタビュー】一人のボイパプレイヤーがイベント主催を通じて気づいたこと(第2回)

【インタビュー】一人のボイパプレイヤーがイベント主催を通じて気づいたこと(第2回)

東京都内で開催されている社会人向けアカペラライブ「◯ペラFESTIVAL(◯には夏や冬など季節名が入る)」の主催者・おかでぃーさんへのインタビュー。

第2回となる今回は、イベントが拡大していく中でおかでぃーさんが感じたことを掘り下げていきます。

※第1回の記事はこちら

第2回「イベントが拡大して分かった、苦しみとやりがい」

出演バンドの増加をきっかけに、チームでの運営体制に移行

ーー前回までは、ソラマチアカペラストリート(以下ソラスト)の落選をきっかけにライブを開催された、というお話を伺いました。当初はご自身でお知り合いに声をかけてバンドのブッキングをしたというお話でしたが、そこから数年で80バンドも出演するようなイベントになったのは驚きですね。

おかでぃー:ありがとうございます。2020年の1月にも「冬ペラFESTIVAL」として開催したのですが、そのときは86バンドでした。出演バンド数の拡大には僕自身もびっくりしています。本当にありがたいですね。

ーー出演希望が一気に増えたタイミングはいつ頃だったのでしょうか。

おかでぃー:自分からバンドの声がけをしなくなったのは2018年1月の冬ペラからです。口コミやSNS上にアップされているライブ動画などを見てくれる方が増えて、そこから一気に増え始めたと思います。また、運営自体が手に負えなくなってきたなと感じたのは同年8月の夏ペラからですね。それまではスタッフを募らず全ての運営を一人でやっていました(笑)パンフレットに載せる写真撮影とかも自分でやっていましたね。

ーーそうなんですね。正直かなり大変だったのではないでしょうか。

おかでぃー:はい、本当に大変でした。当時は使命感のような何かに駆られて頑張っていましたね。でもそうしているうちに、「ライブとしてのクオリティを上げていきたいな」という気持ちが芽生えてきました。事前告知の動画や当日配布するフライヤーの作成も自分でやるのではなく、その手のプロをかき集めた、アベンジャーズのようなスタッフチームを作りたい気持ちが芽生えて、僕を含めて6人の運営体制に落ち着きました。今では僕はタクトを振るだけで、本当に優秀なスタッフ5人が企画・運営を進めてくれています。

「誰かの歌える場を奪ってしまっているのでは」という苦しみ

ーーちなみに、ご自身だけで運営されている時期に一番辛かったことは何ですか?

おかでぃー:そうですね、一番辛かったのは、エントリーしていただくバンドが増えるにつれて、出演できるバンド数に制限をかける必要があることでした。もちろん私自身は制限などかけずに開催したいのですが、ライブハウスのレンタル時間には限りがあるし、仮に朝早くから開演してもお客さんが来るのか、という問題もあります。1つのライブとして開催するからには、必ずどこかで線引きをしなければならなくて…。

ーーたしかに、ご自身だけの判断で線引きをしなければならないのは、心苦しいですよね。

おかでぃー:はい…なので、残念ながら出演していただけないことになったバンドと、スタジオなどで偶然会ったときが本当に心苦しかったです。出演していただいたバンドよりも、そうでないバンドのほうが、個人的な思い入れは強いのかもしれません。

ーーそもそもライブを主催するようになった最初の動機が、「落選したバンドが歌える場を作りたい」ということでしたからね。

おかでぃー:そうなんです!だから結局、「ミイラ取りがミイラになる」ではないですが、自分も誰かの歌える場を奪ってしまっているのではないかと心苦しくなる瞬間があります。だからこそ、どのバンドに出演していただくかは、毎回最後までめちゃくちゃ悩みますね。

ーーそういった状況の中で、少しでも多くのバンドに出てもらうために工夫されてる点などはあるのでしょうか?

おかでぃー:リハーサルするバンドを限定したり、各バンドの演奏時間を入退場込みで10分まで削ったりして、少しでも出演枠を増やせるように努めています。休憩も5分まで削りました(笑)

ーー執念ですね…!

おかでぃー:開演も朝10時半にしています。でも、それくらいが限界ですね。演奏時間も10分を下回ってしまうと1曲しか演奏できず物足りないですし、スタッフからもこれ以上バンド数を増やすのは現実的じゃないよね、という声は上がっています。

ーーそこまでして出演枠を広げたいんだという想いが伝わってきます。

おかでぃー:そう言ってもらえると、少し心が軽くなります。

「ステージで輝く出演者を見ること」がやりがい

ーー反対に、「やっててよかったなあ」と感じる瞬間はどんなときですか?

おかでぃー:やっぱり歌っている出演者のみなさんを見ているときですかね。「◯ペラで歌えてよかった!」と声をかけてもらえる機会が最近増えたのですが、そのときほど嬉しい瞬間はないです。あとは終演後に集合写真を撮るときも、「社会人のアカペラも、まだまだ捨てたもんじゃないな!」と感慨深くなります。無事にライブが終わって、一日の疲れがどっと来ると同時にそういった感覚になるので、喜びもひとしおと言うか。

ーー「社会人が出演する場」であることへのこだわりはやはり強いのでしょうか。

おかでぃー:うーん…そうですね。社会人になってもアカペラをやるというのは、結構な熱量がないとできないことだと思うんです。それなのに、ステージに出演できる機会が少ないと、目標を持って取り組むのが難しい。そこに目をつけたことがライブ主催を始めたきっかけですし、続けている理由の一つです。あとは、学生さんがいずれ社会人になられた時のために、すでに社会人である自分たちがある程度環境を作っておくという意味でも、勝手な使命感のようなものを感じています。

(第3回に続く。公開は2021年1月頃を予定しております。)