アカペラが大好きな学生がたどり着いた私だけのアカペライフ

アカペラが大好きな学生がたどり着いた私だけのアカペライフ

 こんにちは。AJP学生編集部編集長のりさこです。私事ではありますが、先日大学を卒業しました。サークル活動、研究活動ともにアカペラを軸に励み、私の大学生活はアカペラなしでは語れないものとなりました。

 4年間の活動を経て、何を得たのか。そして、今後、アカペラとどう向き合っていくのか。今回はAJP学生編集部の卒業企画と題し、学生編集部を運営してきた私とわくがそれぞれ自分の学生アカペラ生活を振り返ります。

私の”学生アカペライフ”は高3の冬から

 私は幼いころからハモネプリーグのファンで、アカペラを聴くのが大好きでした。高校で所属した部活動で合唱とアカペラに取り組み、歌うことにも楽しさを感じるようになりました。

 高3の冬、観に行ったアカペラの大会の決勝戦。どのグループの演奏も大変素晴らしく、大会だということを忘れて楽しんでいました。優勝を決める観客投票の際は時間ギリギリまでどのグループに投票するか悩んでいたことを今でも鮮明に覚えています。

 このとき、私は自分が大好きなアカペラ演奏の数々の中から1つ、「優勝バンド」を決めることに違和感を感じてしまいました。これは大会の存在を否定しているのではなく、個人的に「優勝」という概念が私の中でうまく整理できなかったということです。

「どのバンドもめちゃくちゃ良かった!!!!」

という、たったそれだけの想いで胸がいっぱいになってしまったのです。

「私にとってアカペラの勝ち負けって必要なのか?」

多分、不必要。なんとなく、心のどこかでそんな答えが出ていたように思います。

憧れた舞台に求められた質の高い演奏…「楽しさ」を取り戻すために

 とはいえ、大きなステージでパフォーマンスをする姿に憧れを抱きました。いつしか私は大会に出ることが目標になり、大学1年でアカペラサークルに所属してすぐ、いくつかバンドを組みました。ですが、質の高い演奏をしなくては大会に出ることができないという焦りが先行し、気づくとアカペラの本来の楽しみを見失っていました。練習を重ねるも結果は振るわず、予選落ち。

 私の手元には悔しさよりも悲しさが残りました。勝敗、演奏のクオリティ、技術などにとらわれ、楽しむことを忘れてしまっていたかこのままではアカペラを続けることが辛くなるのではないかと感じ、大会に出るという目標から離れることにしました。

King of Tiny Roomとの出会い

 所属サークルの活動に集中したことで、アカペラ、さらには歌うことの楽しさや仲間との一体感を感じることができるようになりました。再び「楽しい」という気持ちを味わえるようになったことで活動の幅を広げたいと思い始めました。大学1年の夏のことでした。

 自分の経験を通して感じてきたアカペラの魅力を少しでも多くの人に知ってほしいーこれは高校卒業あたりから思い続けていましたが、どうすればそれが実現できるのかをこのタイミングで改めて真剣に考えるようになりました。

 そんなとき、SNSを通じてKing of Tiny Roomの活動に興味を持ち、掲げている「アカペラしやすい環境づくり」に強く共感しました。KTRでなら私が思いえがく未来が実現できるかもしれないと思い、活動に参加したいと問い合わせメールを出しました。それをきっかけに今もお世話になっている龍さんやよっさんと出会い、AJPにも入会することができたのです。

King of Tiny Room

 本記事執筆をきっかけに当時出したメールを読み返してみたのですが、持っていた思いをただ綴っただけの拙い文章でした…。突然の連絡にも関わらず話を聴いてくださった龍さんとよっさんには感謝してもしきれません。あのとき、「ぜひ一緒にやっていきましょう」とおっしゃっていただいたからこそ、今の私があると心底思います。

 AJPでは学生以外のアカペラーと関わる機会も多くあり、刺激になっています。いくつになってもアカペラを楽しむ先輩方と一緒にアカペラについて考えたり、文章を書いたり、たまに歌ったり。大学サークルでは味わいきれないようなたくさんの経験を積ませていただきました。

老若男女がアカペラを楽しむ姿に感動 大学の研究テーマもアカペラに

 この年の夏休み、縁あってとあるイベントに当日スタッフとして参加しました。会場には、アカペラーやアカペラファンだけでなく開催地域の子供からお年寄りまでもがアカペラを楽しむ光景が広がっていました。特に、演奏を聴きながら飛び跳ねたり笑ったりする子供たちの姿が印象に残っており、感動したのを覚えています。

 このイベントへの参加を通し、アカペラは多くの人にポジティブな影響を与えるのかもしれないと感じ、元より抱いていたアカペラの魅力を広げたいという気持ちがより一層強くなりました。そのために、まずはその「魅力」とはどのようなものかを言語化したいと考えたのです。

 これがきっかけとなり、私は大学での研究もアカペラに関することをテーマに定めました。大学2年生で研究会に所属し、インタビューを用いて、まずは魅力の言語化から始めました。様々なアカペラーやアカペラリスナーに、彼らが感じるアカペラの魅力やなぜ活動続けられるのかを中心にお話を伺いました。詳細は後述しますが、ここで得た語りから思考を重ね、テーマも少しずつ変わりながら研究を進めてきました。

 これまで研究のためにお話をいただいた方々にこの場を借りて御礼申し上げます。

コロナ禍突入 それでも、今できることを探して

 自分の学生アカペラ生活を語る上で避けて通れないのはやはりコロナ禍での苦しい日々です。大学1年の2,3月ころから次々とイベントやサークル活動が中止となっていきました。これからいろいろなことに挑戦したいと思っていた矢先の緊急事態宣言発令。行き場のない悔しい気持ちだけが残りました。

 ですが、いつまでも燻るのは性に合いません。KTRやAJPの力を借りて、何かできないだろうかと思い、こうして動き始めたのがAJP学生編集部でした。

 コロナ禍でもがんばる学生にインタビューしたり、わくとお互いが好きなアカペラについて語り合ったり。私たちが発信媒体となることで、学生たちの活動への想いをSNSとは違った形で読者に届けることを目指しました。

 この機会にいろいろな学生と直接お話し、熱い想いに触れることができたのはとても良い時間とり、私も頑張ろうという刺激にもつながりました。

アカペラワークショップの開催 「歌う」から「きっかけづくり」へ

 大学生後半はコロナによる制限も徐々に解除され、対面活動もできるようになってきました。私もサークル内外でバンドを組み、それまで思うようにできなかった時間を取り戻すかのように歌いました。

 研究では、インタビューのなかでいただいた「アカペラをお試しでできる機会がほしい」というお話から着想を得て、人々にアカペラを始めるきっかけを提供するプロジェクトが始まりました。

 多くのアカペラーは大学や社会人のサークルに所属することでアカペラを始めると思います。ですが、サークルのような大きな組織に属することにより、勉強や仕事との両立や一定期間の活動の継続義務への不安を覚える人もいるます。せっかくの「アカペラをやってみたい」という気持ちを無駄にしたくないと感じ、気軽にお試し感覚でアカペラができるようなワークショップを企画しました。

 私がボランティアをしていた施設に通う中高生を対象に2回開催しました。最初は難しそうと心配していた参加者も、終えるころには楽しむことができ、また参加したいと答えてくれました。イベントの記録は下記のサイトでご覧いただけます!

【音楽講座】はじめてのアカペラ開催しました♪

【音楽講座】はじめてのアカペラ

これからの私のアカペライフ

 私はアカペラーの当事者の1人として、アカペラの素晴らしい魅力を体験することで多くの人に届けたいという想いがあります。振り返れば、大学入学当初からそう感じていました。歌ったり、聴いたり、書いたり…アカペラとの関わり方があるなかで、私は「きっかけづくり」を選びました。それがいちばんやりたいことだと気づけた4年間だったと思います。

 もちろん、歌うことも大好きなので続けていきます! そこで感じた楽しさをこれからも、1人でも多くの人に届けていくことが私のアカペライフの目標です。