※この記事は「アカペラアドベントカレンダー2021」12月25日分の記事です。
こんにちは、AJPのらたと申します。
今回の記事は「アレンジ大喜利 出題者セルフ回答編」です。
昨日の記事の続編となっていますので、まだ読んでいないという方はぜひそちらをチェックしてから本記事をお読み下さい。
目次
大喜利のセルフ回答を発表します
大喜利のお題は、
ゴリゴリに楽器伴奏の曲「アカペラーの歌」を、アカペラにして下さい
でした。今日は出題者である僕のセルフ回答=セルフアレンジと、そのポイント・コンセプト・どんな技を使ったのかを解説する記事となっています。長いので飛ばし読みでも全然大丈夫です。
らたのアレンジはこちら
まず、僕がアレンジしたアカペラver.をお聴き下さい。編成は最も一般的な6人アカペラです。
デモ音源
※音源は全て僕が制作しましたが、技術不足で若干の音割れ・ノイズ等があります。多重録音がお聴き苦しい場合は、楽譜(midi)データの方を聴いて下さい。
歌録音:PCM録音(スマホアプリ)
MIX:Garage Band
楽譜データ
↑MuseScoreデータとmidi、PDFに書き出した譜面が入っています。中身は同じなので、お手元の環境に合ったものを閲覧しながら、この後の解説を読んで頂ければと思います。(圧縮ファイルなのでスマホだと開けない場合があるかもしれません)
アレンジテーマは「原曲のイメージで」
アカペラには様々なアレンジがありますが、今回は「原曲のイメージを崩さずにアカペラにする」をテーマとしました。J-POPなどのアカペラカバーで一番ポピュラーな方向性だと思いますし、原曲をリスペクトして聴き込んだことをわかりやすく表現できる方法でもあります。
重要なのは、いかに無理なく歌える形に落とし込めるかです。
原曲のイメージでアレンジするために必要なこと
まず、原曲のイメージを保ったアレンジをするためには具体的にどんなことをすればよいでしょうか。
裏メロを取り入れたい!
一般的に伴奏のある歌は、ざっくり言えば
【ボーカル】→主メロ+歌詞
【伴奏】→裏メロ+コード+リズム
という要素で構成されています(らた考)。
ボーカル以外で自然と聴き手の耳に入ってくるのが裏メロです。この裏メロの旋律や音色が原曲のイメージ形成に大きく寄与していますので、アカペラに取り入れたい!と考えるのは自然なことです。
裏メロとコードの両立と棲み分け
しかし、裏メロを全てアカペラに落とし込むことはできません。
↑こちらは今回の曲を題材に、原曲のイメージを保ったアカペラアレンジを「棚から棚への引っ越し」に例えた図です。(ピアノとギターは単体で多数の音を鳴らせるので大きな箱になっています)
ボーカル・ベース・ドラムの3パートは比較的そのまま活用できますが、残りが3枠しかありません。和音は3音で作るのが基本なので、コードを押さえるだけで裏メロを歌う枠がなくなってしまいます。非常にダウンサイジングな引っ越しです…汗。
つまり、「裏メロとコードの両立と棲み分け」を無理なく行う工夫が必要になります。その工夫を以下、紹介していきます。
①取り入れたい裏メロの取捨選択
原曲では複数の楽器が重層的に裏メロを奏でていることも珍しくありません。
↑こちらは、お題の曲で鳴っている楽器と役割をセクション毎に書き出した表です。青字と赤字は、アカペラに反映された要素。黒字は削ぎ落とした要素です。
原曲から聴き取れた裏メロをメモしておき、「より強く印象に残ったもの」「歌いやすいもの」のように自分なりに選択していきます。この作業を(楽譜を書き進めながら)少しずつやることもあります。
②裏メロに歌詞をあてる
楽器の音マネ的なスキャットではしっくりこない時に、言葉をあてることで歌いやすくなる場合があります。
歌詞をつける時に僕が個人的に意識するのは「なるべく原曲の歌詞から持ってくる」ということです。リードが歌っている部分でうまく使えば「掛け合い」や「コール&レスポンス」のような効果を出せることもあります。
③裏メロオンリー
1〜2小節ほどの短いスパンであれば、コード成分を排し、ユニゾンで裏メロだけを歌うことも効果的です。ハモっている部分とのギャップでメリハリがつきます。
↑ヤロバン・混声バンドであれば、このようなオクターブユニゾンにしておくと厚みを保てます。
④裏メロの分割
音域の広い裏メロを1人がそのまま歌うと、コードが手薄になったり、他のパートのラインが歌いにくくなりやすいので、裏メロを担当を複数人に分けてコードとの両立を図ります。
⑤裏メロのベルトーン化
アカペラ演奏でベルトーン(アルペジオ)が重宝されるのは、コードの構成音を順番に鳴らすことで裏メロにもなるからです(らた考)。これを逆算して、裏メロからベルトーンを作り出せる場合もあります。先ほどの「分割」の応用とも言えます。
↑本例はベルトーンとしては変則的ですが、原曲の裏メロから作り出すからこそ面白いベルトーンになる場合があると思います。
⑥裏メロカット
先述の通り、原曲の裏メロを全て入れることはできないので、収まりが悪かったり、曲全体で見て過剰だと感じたらカットします。
↑今回の原曲では、イントロのギターの裏メロが、サビで楽器をトランペットに変えて出てくるという伏線回収があります。
なのでアカペラver.のサビも、①の技を使って歌詞で追っかける裏メロを入れたい…と考えたのですが、「Up and Down」で音数が合わないので、諦めました。
おわりに
以上「アレンジ大喜利 らた編」をお届けしました。
もしかするとアカペラアレンジとしては当たり前なことだったかもしれませんが、アレンジを練習中の方に少しでも参考になればと思います。また、決して「これがいいアレンジだ」と結論づけるものではないので、イマイチだと思ったらぜひ反面教師にして下さい。
そして「アカペラアドベントカレンダー2021」は本日で終了です。執筆者の皆様お疲れ様でした!読んでくださった皆様ありがとうございました!
来年のアドベントカレンダーも様々なアカペラーの皆さんが記事を執筆してくれると思いますので、とても楽しみです。
アカペラーの皆様、メリークリスマス、そして良いお年を!
筆者プロフィール
2011〜2014年度、早稲田大学StreetCornerSymphonyに所属。2018年より名古屋の社会人アカペラサークルA-radioに所属。また音楽投稿アプリnanaで「カペ羅太」の名前で多重録音などを不定期で投稿しています。