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紅白ハモれ駅伝〜歌合戦に出場したコーラスグループの歴史〜

特集

年末年始は音楽特番が目白押し。中でも「紅白歌合戦」は毎年話題に事欠かない。アカペラ人たるもの、重層的なハーモニーを武器とするアーティストの存在感は常に気になるところである。

そこで、12月1日から25日まで毎日アカペラに関する記事が公開される企画「アカペラアドベントカレンダー2020」2日目は、年末年始の定番「紅白」を、もう1つの定番「箱根駅伝」に(無理矢理)絡めた企画をお送りしたい。題して「紅白ハモれ駅伝」

スタート地点

紅白歌合戦に出場した歴代のコーラスグループを1つの”駅伝チーム”のように見立てた時、過去70回に及ぶ歴史の中でどのように”タスキ”が繋がれてきたのか?主に「メンバー自身による3声以上のコーラスを取り入れたグループ」の出場を調べ、7つの時期に分けて表にした。本文には興味深かった出来事を書き出している。

“コーラスグループ”が肩書きではないアーティスト(デュオ、バンド、アイドル等)については、範囲が広いため全て網羅することはできず、筆者の独断で重要だと思うグループのみピックアップした。ゆえに表中で空欄の年でも、必ずしも「ハモる人がいなかった」わけではないので、予めご了承願いたい。

また、本文で紹介した中でSpotifyにある楽曲はプレイリストにして各章末に埋め込むので、試聴してみて欲しい。リンクを貼らなかった表中の曲についても検索をオススメしたい。それでは、スタート!!

※本稿は筆者(らた)の個人的な見解を含みます。

1区:第9回(1958)~18回(1967)

※画像が見づらい場合があるかもしれません。本文とプレイリストだけ追って頂いても大丈夫です。

第8回(1957年)まではグループ歌手の出場自体なかった。歴史を変えたのはダーク・ダックス。ロシア民謡「ともしび」のヒットで第9回(1958年)に初出場し、以後14回連続出場。当時は対決カードを「新人同士」「同じジャンル同士」のように決めており、第9回当時は紅組にグループがないためソロ歌手のユニットで対抗させた(その後も何回か同様のパターンがあった)。

翌第10回(1959年)から16回連続出場したのが、”モスラの小美人”で有名なザ・ピーナッツ。双子ならではのユニゾンとハーモニーは今聴いても圧巻だ。初出場曲は「エリーゼのために」に歌詞を付けた洋楽を更にカバーした「情熱の花」。当時は洋楽の日本語カバーが多かった。一方でピーナッツは国産ポップスをヒットさせた先駆者的存在でもあり、第13回(1962年)の「ふりむかないで」などが有名。

和田弘とマヒナスターズは、ムード歌謡の代表格。大きなビブラートと美しい裏声が特徴で、女声ボーカルを迎えた楽曲を中心にヒットを連発した。ところが昔の紅白は「男女対抗」が厳格で、混声ユニットの落選や解体が(マヒナスターズに限らず)繰り返された。松尾和子とのデュエット「誰よりも君を愛す」は松尾ソロで歌われマヒナスターズは別曲に。「お座敷小唄」「愛して愛して愛しちゃったのよ」はマヒナスターズのみで出場し、各コラボ相手だった松尾・田代美代子はなんと紅白落選(!)。今では考えられないことだ。

ジャッキー吉川とブルー・コメッツは、1960年代後半に社会現象となったグループサウンズ(GS)の筆頭。紅白出場曲「青い瞳」「ブルー・シャトウ」を聴くと、ユニゾンが多めだが要所でハーモニーを活かしたサウンドとなっている。

1959年にヒットしたスリー・キャッツ「黄色いさくらんぼ」も綺麗な3和音コーラスだが、歌詞が「お色気」だったため紅白に選ばれなかった。第13,14回(1962,63年)出場のスリー・グレイセスはCMソングやアニメ「魔法使いサリー」の主題歌で有名だが、1961年に大ヒットした「山のロザリア」では紅白に出ていない。

2区:第19回(1968)~24回(1973)

第19回(1968年)、大ブレイクしたピンキーとキラーズが混声グループ出場の扉を開いた。代名詞「恋の季節」は、女声リードボーカルのフレーズを男声コーラス陣が(輪唱ではなく)裏メロで追いかける、その繰返しがとてもキャッチーだ。

ムード歌謡では、ギターが印象的な鶴岡雅義と東京ロマンチカが連続出場。ムード歌謡はハワイアンやジャズ、ラテン等の影響を受けた音楽性に、日本人独特の歌唱法や歌詞世界を織り交ぜたもの。コーラスグループが歌う曲はムードコーラスとも呼び、今も中高年を中心に根強く親しまれている。

デューク・エイセスは、「ドライ・ボーンズ」などの黒人霊歌カバーと共に、ご当地ソング企画「にほんのうた」シリーズでも知られる。第19回(1968年)「いい湯だな」は「ここは上州草津の湯」の歌詞通り群馬県(アカペラ人としては「草津の湯」を「あかぺら市場」と替え歌したくなる)。第20回(1969年)「筑波山麓合唱団」は茨城県で、合唱からカエルの鳴きマネへと振り幅広く歌い分けるテクニカルな曲だ。

「いい湯だな」で私達が思い浮かべるのはドリフターズだが、実は上記デューク・エイセスの曲を編曲・替え歌したもの。本家デューク版では「ババンババンバンバン」とか「アビバノンノン/アハハ(合いの手)」とは歌っていなかった。ぜひ聴き比べて、オリジナルの素晴らしさとドリフ版のアレンジの凄さを感じてみて欲しい。

「グッド・ナイト・ベイビー」ザ・キング・トーンズは第20回(1969年)のみの出場だが、ドゥーワップコーラスのレジェンドとして避けては通れない。1970年代に入ると、第22回(1971年)のはしだのりひことクライマックスなどフォークのハーモニーも響き始める。

3区:第25回(1974)~34回(1983)

1970〜80年代は昭和アイドル全盛期だが、コーラスの観点からは第26回(1975年)から3年連続出場のキャンディーズに注目したい。デビュー曲「あなたに夢中」から3和音のハモりを歌いこなしていた。第28回(1977年)「やさしい悪魔」はサビで真っすぐ走るトップコーラスが効いている。

サーカスは第29・30回(1978,79年)に2大看板「Mr.サマータイム」「アメリカン・フィーリング」で出場。最近はリユニオン・ムービーも公開され、今も変わらず美しいテンションコードを響かせている。第33回(1982年)登場のシュガー「ウェディング・ベル」はイントロのアカペラだけでも歌ってみたくなる。サザンオールスターズアルフィーのような「バンドメンバーによるハーモニー」も、コーラスの専門家とは違う味があり聴き逃せない。

ムードコーラスでは前川清がリードボーカルを取る内山田洋とクール・ファイブが出場を重ねた。コーラス陣が1本のマイクを複数で囲む、私達から見れば”昔ながら”のスタイルを代表するグループだが、この後も時代を超えて紅白に登場するから凄い。第31回(1980年) のロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」は不滅のデュエット曲。職場の宴会で聴いたことがある人も多いだろう。

4区:第35回(1984)~43回(1992)

第35回(1984年)からは藤井フミヤが所属していたチェッカーズが9年連続で出場。ドゥーワップコーラスを取り入れ、アカペラもこなせるスーパーグループだった。アカペラといえば第39回(1988年)のタイム・ファイブも外せない。

第40回(1989年)は平成元年。”昭和を振り返る”ということで松尾和子&和田広とマヒナスターズがやっと本来のユニットで出場。GSブーム当時にグループとしては出られなかったザ・タイガースも晴れて出場した。翌年第41回(1990年)には、数々のアーティストのバックコーラスを務めた沖縄出身の三姉妹EVEが出場を果たした。

1990年前後は海外からのゲストが相次いで紅白に出演。中でも第42回(1991年)のスモーキー・マウンテンはフィリピンでスラム街や貧困を象徴する語をそのまま名としたボーカルグループ。抜群の歌唱力とハーモニーがメッセージを力強く放った。

5区:第44回(1993)~51回(2000)

この時期は由紀さおり・安田祥子姉妹が毎年のように出場。第44回(1993年)の「月の砂漠」は、音源では「字ハモ+オブリガート+ベースのアルペジオ」の構成で素晴らしい多重録音アカペラとなっている。阿佐ヶ谷姉妹によるモノマネでもおなじみの「トルコ行進曲」はスキャットのバリエーションの豊かさに感動を覚える。シャネルズとしてブレイクした当時は出ていなかったRATS&STARが第47回(1996年)に登場し、代表曲「夢で逢えたら」を披露した。

6区:第52回(2001)~60回(2009)

ヒップホップなどの影響を受けて、日本の歌謡界でもアーティストが高度な振り付けをこなすようになり、ボーカルグループのパフォーマンスは「コーラス<ダンス」の時代になっていく。その中で第52回(2001年)からアカペラサークル出身のゴスペラーズが登場(この章は他以上に筆者の体験に基づく記述が挿入されていることをご容赦願いたい)。

ゴスペラーズの紅白出場を振り返ると、ファンだけではない幅広い視聴者層に届く活躍ぶりだったように思う。第54回(2003年)の「新大阪」は演歌のようなCメロがとても新鮮だった。第55回(2004年)は前川清「そして、神戸」でのコラボで”クール・ファイブ役”としてバックコーラスを務めた。第57回(2006年)の「ふるさと」は、一ファンとしてはちょっとした”事件”だったが、今こうして「歴代のコーラスグループが紅白で担ってきたジャンル」を俯瞰してみると納得できる。

私達アカペラ界が歓喜したのは第53回(2002年)だろう。ゴスペラーズとRAG FAIRが同時出場を果たし、アカペラのオリジナル曲を2曲も紅白に送り込んだ。

東方神起は激しいダンスと美しいハーモニー両方のスキルを併せ持った5人だったので、後の分裂が筆者としては本当に惜しまれる。

7区:第61回(2010)以降

第61〜67回(2010〜2016年)は(ゆずなどデュオはあるものの)コーラスグループと言える出場者が見当たらない「冬の時代」であった。第68回(2017年)、勢いのあるバンドサウンドに乗せた3和音コーラスが心地よいWANIMAが登場。そして同年、今をときめくLittle Glee Monsterが初出場。今年を含む4年連続出場は、既に女声コーラスグループとして快挙の域だ。

コーラスグループといえば(特に男声は)衣装の色や形を揃えるイメージが強く、それによってユニゾンや字ハモの美しさもより際立つが、リトグリの衣装は1人1人の個性をしっかり打ち出していると感じるものが多い。また「世界はあなたに笑いかけている」の歌割りはゴスペラーズ以上に細かいパス回しで、”ボーカリストのグループ”であることを物語っている。

一方白組では第69回(2018年)から、長年親しまれてきたムードコーラスの路線を継承する純烈が登場。内山田洋とクール・ファイブが夢に出てきたことが結成のきっかけになったという(参考文献[12]参照)。「イケメン」要素だけでなく、聴き手にしっかり寄り添える音楽性で”歌謡のヒーロー”となったのだ。リトグリとの組み合わせで令和の紅白コーラスを支えてくれるだろう。

ゴール…はない!

いかがだっただろうか。山下達郎スターダストレビューは登場しないのでコーラス史としては物足りなさもあるが、国民的番組に求められてきたハーモニーの数々は、歌唱法やアレンジ等で私達のアカペラに役立ちそうな要素は多いと思う。

そして紅白が続く限り「ハモれ駅伝」にゴールはない。今活躍するグループのさらなる発展、ベテラングループの遅咲き・返り咲き、そして新星グループの出現を期待したい。

今年は新型コロナウィルスの流行でStay Homeの年末年始となる。”おうち時間”で過去のコーラスグループを Digしてみるのも良いのではないだろうか。(らた)

中継所

この「アカペラアドベントカレンダー」も”駅伝”的企画だ。次のランナー、いやライターにタスキを渡そう。明日の更新をお楽しみに!!

カレンダーの一覧はこちら

参考文献

書籍

  1. 「別冊一億人の昭和史 昭和流行歌史」毎日新聞社(1977年)
  2. 「別冊グラフNHK 紅白歌合戦30年の歩み」日本放送出版協会(1979年)
  3. 「紅白歌合戦ウラ話」合田道人著/全音楽譜出版社(2019年,Kindle版)

WEBサイト

  1. NHK「紅白歌合戦ヒストリー
  2. TBS「輝く!日本レコード大賞」歴代受賞者一覧
  3. J-CASTニュース「NHK紅白〜知ってればもっと面白くなる裏話
  4. うたびと「ヒャダインの歌謡曲のススメ#2
  5. 同「タブレット純のプレイリスト
  6. 大人のミュージックカレンダー「2015年12月13日
  7. ギャランティーク和恵の歌謡案内「TOKYO夜ふかし気分」第3夜
  8. mora「匠の記憶」第10回〜キャンディーズプロデューサー松崎澄夫さん
  9. WHAT’s IN? tokyo「佐藤剛の会った、聴いた、読んだ」vol.3
  10. Wikipedia 他

音楽メディア

  1. Spotify
  2. AmazonMusic
  3. YouTube

筆者プロフィール

らた:2011〜2014年度、早稲田大学StreetCornerSymphonyに所属。 2018年より名古屋の社会人アカペラサークルA-radioに所属。 また音楽投稿サイトnanaで「カペ羅太」の名前で多重録音などを不定期で投稿しています。

https://nana-music.com/users/8975107