歌詞を研究する「リリラボ」ライターのハラコウサクです!
前回は岡崎体育さんの楽曲について一人で研究しましたが今回は特別企画。ゲストをお迎えして「aikoの歌詞の世界について語りあう座談会」を開催いたしました!!
目次
aikoの世界を語り合うアカペラー座談会
つい先日、2020年7月17日にデビュー22周年を迎えた日本を代表するアーティスト、aiko。
今回の座談会は、aikoファンのアカペラー3名に集まっていただきました。aikoについてほとんど触れてこなかったaiko初心者の私ハラコウサクが聞き手となり、その世界と魅力をしっかりみっちり語っていただきました。
※あまりにもaiko愛にあふれて文章が長くなるため複数パートに分けてお届けします。
※今回の座談会は、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言発令前の2020年3月下旬に行われたものです。
今回aiko愛を語る3人
今回はこちらの3名にお話しいただきます!
東京理科大 chum, VOICE TRAINING部
aiko歴 : 約6年
東北大 del mundo OB
aiko歴 : 約11年
筑波大 Doo-Wop OB
aiko歴 : 約11年
まずは新曲「青空」を聞いてみよう
本日は皆さん、よろしくお願いいたします。
正直に言いますが、僕はaiko歴はほぼゼロなので、今日は皆さんにaikoさんの世界について授業をしていただくつもりで来ました。
じゃあ今日はコウサクさんをaiko沼に沈める会ですね。
(笑)
まずは一曲聴いていただいて、その曲についていろいろ語ってから、改めて最後にその曲を聴いてみるって言うの、どうですか?やっぱり曲を知ってて入るのと知らないまま入るのでは感覚も違いますから。
せっかくなら「青空」を聴いてみませんか。最新曲だけど、正直あの曲だけで2時間は語れる自信はあります(笑)。
いいですね、最新曲!
「青空」はすごいaikoっぽい曲ですよねー。これで過去曲を俯瞰することもできるくらい。音楽的にもいろいろ詰め込まれてて楽しい曲ですし。
なんか「青空」はこれまでの集大成みたいな感じがしますよね。なんであんなに力入ってるんだろうっていうくらい。
コウサクさんは初見プレイですね(笑)
確かに(笑)
じゃあ、早速聴いてみましょう。
「青空」
どうでした?
素直にめっちゃいい曲ですね…それで、ストレートな失恋ソングだなって思いました。aikoさんってこんなにキャリア長いのに、10代の女の子の気持ちを代弁してくれるような歌詞を書いてる、ってイメージだったんですけど、この曲についてはどの世代にも当てはまるような内容なのかな、と感じました。
確かにそうかもしれないですね。僕がこの曲を初めて聴いたとき感じたのは、aikoの歌詞ってやっぱりある種の恋愛哲学みたいなものがあって、それがこの曲にもすごく反映されているなって。
“触れてはいけない〜あぁ知ってしまったんだ” から始まって、“あなたに出逢う前の何でもなかった 自分に戻れるわけが…” の部分。
aikoの恋愛に対するスタンスとして、一度恋に落ちたり両思いの関係になってしまうともう元の関係には戻れないっていうものがあると思うんです。それは他の曲にも出てきたりするんだけど。「ずっと」っていう曲とか。
あ〜!(深く頷きながら)
その曲のサビで、“あなたに出逢えたことがあたしの終わり” って歌われているんですよね。
強烈ですよねぇ。サビのど頭で。
え、始まったばっかなのに終わり!?っていう(笑)
衝撃的ですよね。曲調も結構重めだし。
ほとんど失恋ソング
「青空」はいろんなaiko要素が入ってますよね。それこそ“触れる手” とか“唇” とか、具体的な共通項が多く散りばめられてます。あとはやっぱり「失恋ソング」ってとこですよね。実はaikoの曲ってほとんど「失恋ソング」なんですよ。ほとんどっていうか全部かも(笑)
えっ、そうなんですか…!?
恋愛関係の曲だと全部かもしれませんね〜。
多い多い。どんだけ失恋してんのってくらいですね(笑)
上手く行ってたと思ってたら終わってた、みたいなのとか、終わりそうな恋、とか、終わった恋のこととか。
え、じゃあ僕がさっき「青空」の感想で「失恋ソングなんですね」って言ってた時も皆さんからしたら「そりゃそうだ」って感じだったってことですか?
まぁそうですよね(笑)
(笑)
例えばラブソングっていうジャンルの中で、①恋し始めた時の曲、②恋してる最中の曲、③失恋の曲、④昔の恋を思い出す曲っていう分け方をしたとすると、aikoは後者2つに寄ってる曲がほとんどだと思います。しかもその中でさらに細分化できて、どういう別れ方をしたか、フったのかフラれたのかとか。
あと「前向きな失恋ソング」が多いですよね。前向きに失恋と向き合うか、もしくは付き合ってるけど凄い後ろ向きになっちゃうか。その二択ですね。付き合ってる時もいつか来る別れの時が気になっちゃうか、別れた後で「でもこの出逢いやあなたとの思い出は大切にしよう」ってなるか。
終始プラス思考も終始マイナス思考もあんまりないですね。
プラスの時はマイナスを懸念して、マイナスの時はプラスへアプローチしていくっていうイメージ。
めっちゃプラス思考だったのに、あれ、2番でマイナスになっちゃった!みたいなこともよくありますね。「キラキラ」っていう曲なんて、曲名からしてもめちゃくちゃ明るそうな曲なのに、2番の頭で “明日は来るのかな” って急に落ち込んじゃうんです。
曲全体を通して明るい雰囲気で楽しげに聴こえてるんだけど、サビのラストフレーズは “そうやって悲しい日を越えてきた” っていう歌詞で終わる。急にどうした!?何があった!?みたいな(笑)
逆に別れた後でポジティヴになるパターンだと、「嘆きのキス」とかですかね。サビの最後に“僕の今を支える大きな糧” って歌うんですけど。あなたがいてくれてよかった、今はもう別れちゃったけど、みたいな。そう考えると、aikoの曲って「終わり」を常に意識しているわけなんです。やっぱり、aikoは恋がしたい人なんですよね。
確かに!
「恋をしている時」「ときめいている時」「付き合うまで」が頂点で、付き合ってからは「終わり」しか意識しない。これはやっぱり実際にaikoの経験から来るものも大きかったりするらしいんですけど。
「女性の恋愛の代弁者だ」という歌い方はしない
では、ちょっと見方を変えてみたいんですけど、僕のJ-POPに対するイメージ、特に恋愛ソングの場合って「共感」をすごく重要視する歌詞が多いと思うんです。それを踏まえて、aikoさんの曲を聴いて皆さんが感じるものって、共感なのかそれ以外の感情だったりするのか、っていうのをお聞きしたいんです。例えばあやねるさんが女性目線でaikoさんの曲を聴くとどう感じますか?
んー、なんですかね…。
aikoさんの曲って、女性目線から書かれてるっていうより、「主人公=aiko」って感じなんですよね。常に一人称が「あたし」。女性アーティストの曲って、曲によって目線が変わることも多いと思うんです。でも、aikoさんは常に「あたし」。明るいポップな曲でもどんなバラードでも「あたし」なんです。すごく自分の主張が強いと感じることも多いです。もちろん例外もありますけどね。
私はaikoから恋愛を教わったと言っても過言ではないです。……いや、本当は教わっちゃいけないんですけどね(笑)
教わっちゃいけないんですか?(笑)
めっちゃ失恋してますからね(笑)
(笑)
共感という意味では、共感するところもしないところもどちらもありますね。少なくともaikoさんは「女性を代表して歌っている」という感じはないですね。「私は女性の恋愛の代弁者だ」っていう歌い方はしていない。
確かに。
でもそのこだわりで歌詞が薄くなることはないし、むしろ強烈なメッセージになっていくんですよね。極限まで個人に根差した表現なので。「会う」ではなく「逢う」という字を使ったりとか。
「おもい」っていう言葉でも、「思い」ではなく全部「想い」という字を使ってますよね。そういう表現の細かい部分でもこだわりを感じるというか。
そういう意味では、僕は共感というよりは少し引いた目線で見ることが多いですね。逆に、相手がこういう風に想ってくれてたら嬉しいな、という受け取り方をしてます。辛くなってしまった時は恋人を慰めるような歌詞の曲を聴きたいと思いますし。なので、僕の場合は「恋愛を学んだ」というよりは、ある女性の気持ち、乙女心の一例を学んだ、という言い方になるのかもしれない。
なるほど。意外と皆さん多様な見方をしてらっしゃるんですね。ところで、僕はさっき出た「aikoから恋愛を教わってはいけない」という言葉がものすごく気になっているんです(笑)そこについてもう少し詳しく教えてもらえますか?
教わっちゃいけないわけじゃないんだけど…(笑)
(笑)
でも確かに「実らない恋」は多いかもしれないです。今aikoって13枚のオリジナルアルバムが出てるんですけど、その中でも「これ全部別れの曲なんじゃないか?」みたいなアルバムがあって。「泡のような愛だった」っていうアルバムで、タイトルからそんな予感はしていたんですけど(笑)
逆にいうとそこから恋愛を学ぶというよりは、自分が失恋したときに、その気持ちをどうすればいいんだろう、どう向き合えばいいんだろう、というときに聴く人が多いのかな、と思います。だから言うなれば、失恋への対処法を学ぶ、みたいな。
確かに失恋への対処法はプロかもしれないですね(笑)
→Part 2へ続く
(公開時期は7月下旬を予定しています)
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