新型コロナウイルス感染症の影響で、まだまだ対面でのあらゆる活動が難しい状況です。
そのような状況の中で、音楽系団体はどのような活動を行っているのでしょうか。また、その裏には、どういった困難や、それを乗り越えるための工夫があるのでしょうか。
今回は、信州大学アカペラサークル Capelの山本さんにインタビューしました。
バックナンバー:本連載はこちらにまとまっています。
目次
信州大学アカペラサークルCapel
信州大学3年、(前)副サークル長で、まじめちゃんキャラ担当の山本です。
インタビュワー
AJP編集部員。高校生の頃からのアカペラ経験を経て、アカペラがしやすい環境、社会を求めて活動している。アカペラをしている学生との橋渡しにもなれるよう邁進中。
AJP編集部長。本業であるWebメディア運営の知見を活かし、編集部立ち上げに従事。編集部員とともにアカペラにおける「新しいきっかけ」を生むコンテンツづくりに力を入れている。
コロナ禍での活動方法について
今日はどうぞよろしくお願いいたします!
よろしくお願いいたします!
早速ですがコロナ禍になってから現在まで、団体としてどういった活動をされてきましたか?
Capelの活動状況は以下の通りです。
- 3月 卒業ライブ中止(出演予定バンドに動画撮影を依頼、サークル内で共有)
- 4〜6月 対面での練習禁止、それに伴いライブ中止
- 6月 オンラインガイダンスの開催(1回)
- 7月 対面練習再開許可(テスト期間のため活動できず)
- 8月 オンラインガイダンスの開催(1回)、対面でのガイダンスを企画するも現状から中止を決定
卒業ライブは中止
やはり「卒業ライブ」も中止になってしまったんですね。
そうなんです。Capelの「卒業ライブ」はサークルの外部にも公開しており、例年サークル員以外の方も見に来てくださるような大学アカペラ生活の締めくくりイベントでした。
それがなくなってしまったのは悲しいですね…。代わりにサークル内で動画発表会をした、ということでしょうか?
そうですね。今回はサークル内部で共有する動画を作成しました。
リモートアカペラではなく、対面で集まって歌った様子を撮影し、それらを集めて1つの映像にしました。
モチベーションの高い人と低い人がわかれている
コロナ禍で対面活動ができない中、サークル員の間にモチベーションの差は生まれませんでしたか?
もちろんありました。モチベーションの高い人と低い人がわかれている印象です。
やはりそうですよね。他のアカペラサークルの方にもお話を伺っていますが、全国的にも同じ状況なようで難しい問題だと感じています。
上級生は卒業までの残り時間も少なく、録音やMIXのやり方もわかっている人が多いのでリモート活動も積極的に行っていました。
ですが、2年生はまだアカペラ自体に慣れていなかったことに加え、キャンパスが分かれるため、なかなか活動をできず、コミュニケーションもとれていないようです。
なるほど。キャンパスが分かれているのもなかなか大きな障害ですね。
ちなみにコロナ前はどれくらいのバンドがサークル内で活動していましたか?
コロナ前は30バンドくらいが活動していましたが、2020年8月現在では2バンド(企画バンド含めても5バンドくらい、他は休止中)になってしまいました。2年生は「技術面の知見がない」、3〜4年生は「院試や課題が忙しく時間が取れない」といった理由でできていない状況です。
現状の打破のためにサークル員同士で何か話し合う機会はありましたか?
サークルの委員長メンバーで会議があったので、コロナ禍の活動について話し合いました。
新歓期間はアカペラに興味がある人をSNSで募集
新歓期間は対面での活動ができなかったとのことですが、どのようにして新入生の募集を行われたのでしょうか?
まずは入部したい人、アカペラに興味がある人をSNSで募集しました。参加者を事前に把握するため、DMをくれた人にサークルアカウントで個別に対応し、備えました。
それが6月と8月に行ったオンラインガイダンスですね!
はい。DMをくれた方を小グループ(先輩1人と1年生2人)に分けて、サークルの行事の説明や質問対応をしたりサークルの動画を見たりする会をオンラインで実施しました。話題としては、バンドの組み方、サークルのこと、学校のこと(自動車学校のこと、寮のこと)などが多く話題に挙がりましたね。
また、入部届けをホームページで公開・受付し、入部希望をくれた人にメールで個別に案内をしていました。
SNSのように情報が流れてしまう場所だけではなく、ホームページも活用されたのがミソですね!
そのオンラインガイダンスは何名ぐらい参加されたのでしょうか?
1回目10人、2回目はテスト明けということもあり2人でした。やはりオンライン上だけだと限られた人にしか届かず、難しいですね。
学校独自の活動再開基準に応じて活動
ちなみに大学内の他団体はどのように活動しているのでしょうか?
大学独自の活動再開基準に応じて活動を行っています。
運動系サークルは、6〜7月あたりから活動を再開し、新入生を含めたメンバーで、屋内外での活動を行っています。文化系サークル(特に歌を扱うサークル)は、実際に集まって歌うことは出来ていません。JAZZ、競技かるた、ダンスなどのサークルは6月頃から活動を再開しています。医学系サークルは7月から活動再開していますが、新入生はまだ参加していません。
他のサークルを見ていて、自分たちでもできるなと思ったこととや、できていなくて悔しいなと思ったことはありますか?
混声合唱団は歌を使わないレクリエーション活動をされており、これはCapelでもやりたいと思いました!
できていなくて悔しいことは、運動系サークルで行われているような対面の活動ですね。
Capel独自で取り組んだことはありますか?
リモートで参加できる企画などです。
やはり対面の活動は難しいですよね。大学の授業もオンライン受講なのでしょうか?
基本的にオンラインで受けています。実習や実験が必要な学部・学科の場合は、その時間だけ通学するような形をとっています。学部によっては、既に後期もオンライン講義の形態をとることが決定しているようです。
なるほど、オンライン活動は今後も続きそうですね。
ただし対面が完全NGというわけではありません。大学に申請して、許可が下りれば活動できます。今はかろうじて歌う活動は許されていますが、だからといって対面で活動するのは心理的障害もあり、まだまだ難しそうです。
そうですよね。不安が残る中で対面でハモるのは難しいですよね。
コロナ禍での新歓活動について
先程おっしゃっていた新歓活動についてもう少し詳しくお伺いさせてください!
前述の通り、SNSでの告知を主とし、2回のオンラインガイダンスを開催しました。その他に、大学のサークル合同オンラインガイダンスにも参加しました。
サークルの合同ガイダンスというのは初めて聞きました!ちなみに、3つの活動を通して困ったことは何でしたか?
やはりSNSをやっている人にしか情報がまわらないことでしょうか。また、生で演奏を聴いてもらうことが1番効果的な宣伝であると思うのですが、それが出来なかったことです…。
他のサークルのインタビューでもやはり同じようなお話を伺いました。生で聴いてもらえないのは厳しいですよね。
そのことに対してはどんな対策・工夫をされましたか?
オンラインガイダンスの際、参加する人を事前に把握し質問を集めたり、事後アンケートを実施し報告書を作成したりしました。これらにより当日の話題づくりがスムーズになったり、オンラインガイダンスに参加していないサークル員にも当日の様子を想像してもらいやすくなったりしたと思います。さらに、学内のサークル情報をまとめたサイトを学生団体が作ってくれたので、そちらで情報を流すこともできました。その学生団体は合同ガイダンスのようなものも開催してくれ、そちらにも参加しました。
合同ガイダンスの効果があったかは疑問
ガイダンス後、新入生からの反応はどうでしたか?
参加してくれた新入生向けに「参加してどうだったか」「告知の頻度はどうだったか」などのアンケートを実施したところ、「雰囲気知ることができた」など、前向きな意見が多かったです!
おお!それは何よりです!
ただ、知ってもらう機会にはなりましたが、効果があったかは疑問です…。新規入会者の人数を見ると、例年は20〜30人程ですが今年度は9人でした。(8月17日現在)
リモートアカペラについて
リモートアカペラをやっているOBOGに教えてもらった
「リモート企画」をされたというお話でしたが、どのように進めましたか?
サークル内で組んでいたバンド単位で、既に演奏したことのあった曲で行いました。各自イヤホンマイクとスマホを使って録音・撮影し、音源・動画編集を分担して行いました。音と映像は別撮りで、Dropboxに保存したものをLINEで送ります。ミックスはAudacity、動画はAndroidスマホでVideo CollageとVLLOを用いて編集しました。
困ったことだらけだったと思うのですが、特にどんな点に困りましたか?
知識や経験がなく、完成するまでに時間がかかったことです。特にミックスは、納得いくまで…というよりは、妥協できるところで「完成」とするしかなかったように思います。
授業は不慣れなオンライン形式で、いつもは無い課題もあったので、クオリティにこだわる十分な時間の確保が難しかったです。編集する人に負担がかかってしまいました。
そうだったんですね…さぞ大変だったかと思います。
できればパソコンで動画編集をしたかったですが、無料ソフトが上手く見つからず、スマートフォンの無料アプリを用いたものの、結局使っていく中でアプリに課金することになりました。スマホでも十分な編集はできましたが、端末の容量が足りないことや、Androidの場合にひとつのアプリで思うような編集ができないのが大変でした。
納得されていない部分もあるかとは思いますが、やはり1つの形にされたことは素晴らしいと思います!特に工夫した点はありましたか?
音と映像で役割分担したことです。ミックス作業と動画編集はそれぞれ1人ずつで分担しました。また、動画編集時に歌詞をつけるなど、歌以外のエッセンスを足すことで、リモートアカペラならではの世界観を表現できたと思います。
ちなみにこれらのリモートアカペラ動画作成は、サークル全体の活動として行ったのか、それともバンド単位で各自で行ったのか、どちらなのでしょうか?
現状はバンド単位です。夏休みに入ってからはサークル全体で実施する予定です。
バンド単位なんですね!元々技術を持っているメンバーがいたのでしょうか?
大半はやったことがなかったのですが、OBOGがリモートアカペラをやっていて、その先輩に教えてもらいました!
それは心強いですね!
ちなみに、その動画は公開していますか?
各バンドごとにSNSで発信しています!
一方で、1年生はまだリモートアカペラを経験していないのでしょうか?
そうですね。ただこれから1年生の活動は本格開始です。「全体歌」という、参加意志があれば1年生でも参加できる企画を実施予定です!
「全体歌」を通じて1年生も参加できる場を作りたい
Capelにはサークル全体で1つの曲を歌う「全体歌」というイベントがあります。毎年はやらず不定期開催なのですが、楽譜を書ける人や、やろう!という意志のある人がいる代では実施しています。
面白そう!対面の活動が厳しい中、新入生向けの練習はどのように進めるのでしょうか?
今はかろうじて、対面で歌うことは許可をもらっているので、新入生に対しては集まれる先輩で練習を見る、といった形でサポートを行っています。ただ、コロナ禍でまだ長野県に来られない新入生もいるため、録音した音源を聴いて、「こうしてみたら」とオンラインでアドバイスをする機会だけは作れればと思っています。
2年生以上のサークル員は、対面での練習は行っていますか?
キャンパス間の移動が厳しいため、同じキャンパスで集まれる人は今後再開する可能性があります!
演奏会の開催やイベント出演に関して
10月にはライブを予定
今年度、団体として演奏会の開催や、イベント出演などの予定はありますか?
10月中旬頃にライブを企画しています!
おお~!
ライブに向け、今どのような段階ですか?
学校内の施設が確保できたら、対策について考えるという段階です。毎年11月初めには学園祭があるのでその代わりに実施したいです。また、執行代の代替わりになるので、そのきっかけとしても何かやれればいいかと思い、企画しています。
現実問題として開催できそうなのでしょうか…?
今の所は大丈夫そうです!
本人たちの判断で出られそうな1年生にも出てもらう予定です。
「全体歌」はそのライブで聴けるのでしょうか?
残念ながらバンドごとの演奏しか予定していません。客席も数を制限して、あくまで「演奏する機会を設ける」ために行います。お客さんは呼ばず、配信だけで、サークル員のみのライブという形です。
※実際のライブの様子は以下のリンクよりYouTubeで視聴できます!
信州大学アカペラサークル Capel サークルライブ2020 再生リスト
ライブ開催にあたり検討している事項
そういった形式ならリスク回避もできそうですね。そのほか考えていらっしゃることはありますか?
場所の問題や、開催中止判断の基準、1年生への対応についてなど協議中です。
※2020年8月現在、検討している内容
- 場所は校内の広い講義室を予定
外での開催も検討したが、雨天での開催方法、場所の確保などの問題から、屋内での開催が(学校側から)禁止された段階でライブも中止せざる負えないということになった。校外の施設を使った場合、万が一感染者が出てしまった時に、学外への影響が大きいということから、校内での開催が良いだろうという結論になっている。 - ライブ当日の2週間前くらいには開催可否を判断する
ライブ当日から2週前くらいには開催可否を判断することを検討。しかし、県独自の警戒レベルを判断基準にするのか、自分たちの基準から判断するのかは協議中。県の警戒レベルを基準にする場合、各キャンパスが離れている信州大学は、キャンパスによって警戒レベルが変わる可能性が考えられる。そのため、ひとつのキャンパスがアウトだったら中止にすべきなのか…といったところも迷っている。 - 1年生は本人の意志で出るか出ないかを判断
1年生をそのライブに出すか出さないかについても協議した。練習期間がうまくとれるのか…といったところが主にネックになっている。結論としては、目標を持って練習ができるよう、1年生の出演枠も用意する予定。その上で、本人の意志を聞き、出るか出ないかを判断してもらう。 - 外部のお客さまは入れず、サークル員のみが参加するライブにする
感染予防として、外部のお客さまは入れず、サークル員のみが参加するライブにする予定。ライブはオンラインで配信し、InstagramまたはYouTubeを用いる。その他、以下のような対策を講じる予定。
・客席には距離を開けて座れるように印を打ち、それ以外には座らないようにする。
・休憩を長くとり、換気を十分に行う。
・マイクカバーをつけ、演奏者の間隔も保つ。
・事前に検温、体調について各自で確認し、運営側へと報告してもらう。
・打ち上げは行わない。
団体の運営について
役職や係の引き継ぎはどのように行う予定でしょうか?
例年は、学園祭後に2年生(2年後期〜3年前期が任期)だけで集まり、話し合いにより役員を決定する方法をとっていました。今年度は、10月中に話し合いの場(方法は任せる)をつくってもらい、役員を決定してもらいます。一応、そこで代替わりとしますが、2020年いっぱいは現役員と共に2代で協力しながらサークル運営をする予定です。
たしかに、完全に代替わりせず協力しながらサークル運営されたほうが安心ですよね。
後輩たちに「こうしてほしい」という希望はありますか?
役員はやりたい意志のある人にやってほしい、と思っていますが、意志のある人がいない場合にどうするか、という懸念があります。みんなで話す機会を設けて決めてほしいですね。
とはいえこの状況で、対面で腹を割って話し合うのも難しいですよね。山本さんも気が気じゃないと思います。
はい(笑)
例年あるはずの学園祭という大きなイベントが無くなっているため、次期運営代の子たちの心の持ちようがどうなのか不安です。やる気がないとかではなく、運営代という役目を任されるにあたって気持ちの切り替えがしにくいのではないかと思います。
ただ、私たちは後輩に干渉せず、見守っていたいと思います!
今後の対面での活動について
現状、対面で歌うことが完全に禁止されているわけではないですが、かといって一気に再開するのも難しいかと思います。今後何を基準に対面活動に切り替えていきますか?
ライブに向けた対面練習を開始すれば活動再開と言えるのではないか…と思います。新入生に関しては、楽譜にそった練習が開始されれば活動開始…となるように思います。
世の中が今後どうなっていくのかわかりませんが、やはり状況を見ながら活動再開していきたいですよね。
そうですね。ここでいまみなさんとお話ししてまたいろいろと学ぶことがありましたし、私の中で考えを整理することができました。焦らずに今できることを進めていこうと思います。
ライブ配信、成功を祈っております!本日はありがとうございました!
私もいま大学2年生なので、他大学の活動を知ることができてよかったです。一緒に大学アカペラ生活を楽しんでいきましょう!ありがとうございました!
ありがとうございました!
最後に
信州大学アカペラサークル Capelの山本さんにお話を伺いました。AJP編集部では現在「コロナ禍での音楽系団体の活動方法」に関して、本記事のような特集記事の制作を進めています。
これまでの取材一覧はこちらからご覧いただけます。
ウィズコロナの活動インタビュー編集後記
コロナ禍での活動の難しさはサークル員とともに私も毎日頭を悩ませています。山本さんの執行代としての思いや新入生を迎え入れたい気持ちなど、大きな共感を抱きました。大学からの規制がある以上、サークル活動を自由に行うことはできません。その中でどのように工夫し、サークルを維持していくか、まだまだ課題はあるのではないかと感じました。信州大学アカペラサークルCapelさんのお話を伺い、こうした状況下でも積極的に活動に取り組む姿勢に刺激を受けました。コロナを言い訳にして目を瞑らず、できることに力を注いで行こうと思います。
コロナ禍でのアカペラ活動においては、学年や現役生/卒業生といった垣根を超えて協力しあうことが不可欠だと思います。困難な状況な中でもどうにか工夫されて活動をされている姿には、私自身も見習わなければならないと感じました。今回の特集を通して、少しでも多くの方が「ウィズコロナのアカペラ活動」をよりよいものとできるよう努めていきます。
ここまでお読みくださりありがとうございました!