プロとして伝えたい「生アカペラ」の感動【ハモヒスインタビュー#9 IWAjIさん②】

プロとして伝えたい「生アカペラ」の感動【ハモヒスインタビュー#9 IWAjIさん②】

こんにちは!AJP編集部のSINです!

アカペラの歴史をまとめるプロジェクト「Harmony-History(略してハモヒス)」。今回は「チキンガーリックステーキ」から始まった関西のプロアカペラグループの系譜で誕生した「シュガーズ」のリーダー・IWAjIさんへのインタビュー(全3回)の2回目をお届けします!

インタビューの様子(2021/02/01)

第2回は、シュガーズのメンバーになった経緯や、アカペラのプロとして活動しながら感じてきたことをたっぷり伺います!

本記事は第1回の記事の続きとなっておりますので、まだお読みでない方はそちらを先にご覧ください。

インタビュアー紹介

わく
わく

筑波大学アカペラサークルDoo-Wop所属の大学3年生。
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SIN
SIN

群馬のアカペラー兼イベンター兼アカペラCD収集家として活動する社会人。
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らた
らた

名古屋在住のアレンジ大好き社会人。プロフィール

NESTにスカウトされてアカペラのプロに!

SIN
SIN

NESTに入ったのはどのタイミングだったんですか?

福岡スクールオブミュージック(FSM)という専門学校の学生で組んだ、「シンクロノイズ」というめちゃめちゃ上手なグループがアカバコで人気だったんです。彼らとうちのサークルが仲が良くて、専門学校で学んだ事をうちのサークルに教えにきてくれたりしました。

IWAjI
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らた
らた

それはいいですね!

シンクロノイズでボイパをやってた人が、僕が大学3年の時に既にNESTに所属していたんです。RobStar LobsterというグループのDonnyさんという方なんですけど、その方からいきなり電話がかかってきて。

IWAjI
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補足RobStarLobster(通称ロブロブ)
神戸のNEST所属混声アカペラグループ。2001年Real Blendとして活動開始。2007年RobstarLobsterに改名。2010年惜しまれつつも解散した。
SIN
SIN

なるほど。

当時のシュガーズがメンバー追加を考えていて、HEROさんから「九州に誰かいない?」って聞かれたDonnyさんが、うちのサークルにいた僕の事を思い出してくれたそうで、「アカペラでプロになる気ない?」って電話してくれたんです。それで僕が「ありますね!」みたいな感じで(笑)

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

即答ですね!(笑)

元々からプロになりたい!という思いがあったわけではないんですけど、自分の歌が認められたのが嬉しすぎて「はい」と言っちゃって(笑)何もなければ音楽の教員になる予定だったんですけど、ちょうど教育実習が終わって「教師は向いてないな…」と思っていた時だったので、プロのお誘いが来て「やります!」と(笑)

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

タイミングが良かったですね(笑)

でもそれが大学3年の時だったので、実際にHEROさんと連絡取った時に「いつから来れる?」って聞かれて「大学のサークルを卒業までやりたいので1年待って下さい」と言ったんです(笑)

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

ハハハハ!(笑)

今考えたらヤバいですよね(笑)当時のシュガーズが、誰かが抜けたからじゃなくて増員のスカウトだったから、1年待ってもらえたんだと思います。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

でもその頃のシュガーズってメンバー交代が多かった時期でしたよね。

当時はHEROさんとNARUさん・RyOさん・U:KOさん・Shinさん(後のSMELLMANのメンバー)の5人だったのがHEROさんとNARUさんだけになって、そこにKen、大地、ROBINさんが入って、その後僕が入って、6人でスタートしたんです。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

あと、IWAjIさんは最初期のザビエルズ(theXAVYELLS)にも入ってましたよね。

ヘルプでいました。ザビエルズ&IWAjIの頃ですね。

IWAjI
IWAjI
1st single『Old New』Photo by SIN
SIN
SIN

ザビエルズに教えるためにIWAjIさんがヘルプで入っていたんですよね。

わく
わく

すごい!そうだったんですか!

そうそう。ネストの歴史はすごいからな~(笑)

IWAjI
IWAjI

「毎週ワンマンライブ」のすごさ

SIN
SIN

NEST所属のグループの活動は、定期ライブ、音楽鑑賞会、イベントがメインなんですか?

バンド単位で受け持ちが違うところはありますけど、基本的にはレギュラーライブですよね。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

毎週ワンマンライブをやってるってすごいですよね! 

補足NEST所属グループは基本的に神戸のライブハウスCASH BOXにてワンマンライブを毎週行う事が通例となっている。 

入った当時はピンと来てなかったんですけど、活動してると「毎週ライブやってるんですよね!?」っていろんなアーティストさんから言われるので、特殊なことをやってるんだなとわかってきましたね。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

NESTに入ると「膨大な量の楽譜を一気に覚える」という洗礼を浴びると聞いたのですが、シュガーズに入る時もそうだったんですか?

そうですね。30曲は覚えたかな。

IWAjI
IWAjI
わく
わく

わ~、すごい!

でも楽譜を覚えることへの抵抗はあまりなかったんです。大学の時も最大8バンドぐらい掛け持ちしていたので。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

おっくんスタイルですね(笑)

練習してなさすぎて全然覚えてないこともありましたけど(笑)自分で言うのもおかしいですが、サークルの中ではできる方だったんです。むしろ「もっとやれるのに」という気持ちもあったから、何十曲覚えてって言われても「はーい」っていう感じでした。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

へ~!(驚)

やっててよかった!吹奏楽

わく
わく

そういったセンスは、中学高校と続けていた吹奏楽が関係していたんでしょうか?

めちゃくちゃ関係してると思います。プロになって、アカペラを教えることが増えたんです。一番最近だと愛知の学生さんにワークショップをしました。あと、グループのメンバーチェンジでアカペラ未経験の人間が入ってきた時ですよね。「わからない」の場所が、僕が思っているより全然手前にあるんです。「楽譜が読めない」とか「リズムパターンが掴めない」とか。

IWAjI
IWAjI
わく
わく

あ〜!(納得)

そんな時、吹奏楽部で基礎的なことを学んでいたから、自分に「コーラスの覚え方」「リズムが乱れる時の練習法」みたいな引き出しがあることに自分で気づいたんです。

IWAjI
IWAjI
らた
らた

自然に身に付いていたノウハウがアカペラで活かされたんですね!

はい。あとは音楽的な抑揚感。吹奏楽は比較的クラシック寄りで、「ここからここまでをワンフレーズとして捉える」とか、強弱記号やスタッカートなど、細かい表現の指示も楽譜に書いてあるんですけど、アカペラの楽譜だとあまり書いてないですよね。

IWAjI
IWAjI
らた
らた

確かにそうですね!

そういう細かいことも、教える時に役に立ったので、吹奏楽はすごくやってて良かったと思います。「教わる側がわかっていないこと」よりも「自分ができること」がわかるようになった。すると自分が演奏している時にも、より自分がやっていることを管理できるようになるというか。

IWAjI
IWAjI
わく
わく

曖昧だった自分の音楽性が、自分の中でちゃんと定まったということですね。

そうそう。だから「教える」ってすごくいいなって思いますね。

IWAjI
IWAjI

IWAjIさんが感じる「アカペラ界の変化」

SIN
SIN

IWAjIさんはシュガーズに入って何年になりますか?

12年になろうとしてます。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

長年プロとして活動する中で、お客さんの雰囲気とかイベントなどから、日本のアカペラ界の変化を肌で感じたことはありますか?

学生時代含めると16年ぐらいアカペラで人前に立っていますけど、一番思うのは「アカペラに慣れられている」。YouTubeも浸透して、珍しくはなくなったのかなとは感じる。だけど一方で、意外とそうじゃないのかもと思ったりもするんですよね。

IWAjI
IWAjI
らた
らた

具体的にはどういうことでしょうか?

アカペライベントのお客さんはアカペラ好きの人が多いと思うんですけど、(音楽全般において)アカペラのシェアはそんなに大きくないと思うので、アカペラをあまり知らなかった人が生で聴いたらやっぱり感動があるんだなと思うこともあります。

IWAjI
IWAjI
わく
わく

なるほど!

あとアカペラのイベントって、他のジャンルにアカペラが混じるイベントが少ないんです。でも本来アカペラはジャンルではなく演奏形態なので、例えばロックをやるアカペラバンドは、ロックバンドと対バンすれば良いと思っちゃう(笑)あとは、ハモネプ前後でリスナーの雰囲気が変わったというのはよく聞きますね。HEROさんがめちゃめちゃ言ってたから。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

一番打撃を受けたって仰ってましたね!珍しくなくなっちゃったから。

他に変わったことといえば、学生さんの動きは大きく変化してると思います。

IWAjI
IWAjI
わく
わく

どういった風にでしょうか?

僕らの頃は、今で言うアカスピのような大会がなくて、イベントといえばお祭りで歌ったりするものだった。それが「学生アカペラ」というカテゴリで上を目指すという「甲子園」的な文化となっていって、スキルアップを目指す人が増えたという印象があったんですが、その時期も終わりかけていると思っています。アカペラを知らない人に聴いて欲しいと思っているであろうというグループが増えている。

IWAjI
IWAjI

殻を破るというか。

IWAjI
IWAjI
わく
わく

大会で優勝する為ではなく、純粋にアカペラで人を楽しませようと。

そうそう!そういう変化は感じてますね。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

YouTubeの影響はあると思いますか?今はアカペラのインフルエンサーみたいな人たちが活躍していますが。

YouTubeでは、「アカペラを題材にした映像作品作り」を楽しんでいる人が多いのかなという印象ですね。工夫が凝らされていてすごく面白いんですが、一方で今後は「公園で集まって歌う」みたいな、より生っぽい感じが求められるようになるんじゃないかなと思ったりもします。

IWAjI
IWAjI
らた
らた

なるほど。音も映像もしっかり作り込まれた「作品の魅力」から、集まってすぐ歌える「生の魅力」が重視されるようになるんじゃないかと。

そうですね。アカペラに限らず、デジタルで音楽を聴くのが主流の時代が終わりかけているというか。

IWAjI
IWAjI
SIN
SIN

デジタル慣れ、デジタル疲れがあるかもしれないですね。

「編集されていないものが見たい」という欲求をとても上手な形で提供してるのがTHE FIRST TAKEだと思うんです。やっぱ多くの人が「生」を求めているんだなと思いましたね。

IWAjI
IWAjI
ゴスペラーズ-VOXers / THE FIRST TAKE

次回のお話

次回は、IWAjIさんインタビューの最終回。シュガーズや所属事務所での活動で学んできたアレンジやライブの作り方について、お話を伺っていきます。

次回記事はこちら

また、シュガーズの情報は公式ホームページのほか、ブログ、TwitterYouTubeでも発信されているので、是非ご覧ください!