こんにちは!AJP編集部のしげです!
アカペラの歴史をまとめるプロジェクト「Harmony-History(略してハモヒス)」。今回は「チキンガーリックステーキ」から始まった関西のプロアカペラグループの系譜で誕生した「シュガーズ」のリーダー・IWAjIさんへのインタビュー(全3回)の3回目をお届けします!
第3回は、シュガーズが追求するアカペラについてたっぷり伺います!
本記事は第2回の記事の続きとなっておりますので、まだお読みでない方はそちらを先にご覧ください。
目次
インタビュアー紹介
筑波大学アカペラサークルDoo-Wop所属の大学3年生。
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群馬のアカペラー兼イベンター兼アカペラCD収集家として活動する社会人。
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名古屋在住のアレンジ大好き社会人。プロフィール
「アカペラっぽいこと」をしないHEROさん
今まで活動してきて印象に残ったことや、転機となったエピソードはありますでしょうか。
やっぱりHEROさんは刺激的ですよね。学生からアカペラをやってると「こういう風にハモりたい」というみんなの共通イメージがあると思うんですよね。HEROさんの場合はマジでそれがなくて(笑)全然アカペラっぽいことをせずに、想像もつかないようなスキャットを当ててくるんですよね。
確かに、聞いたことがあります。他のグループが使わないようなスキャットを使うのが、シュガーズらしさだと。
そうなんですよ。「ジャ」とか普通あんまり言わないですよね(笑)
楽譜上ではアルファベット表記ですか?
基本アルファベットです。カタカナだとリズムが単調になるんですね。日本語と違って英語には二重子音が多いから、英語の方がリズムの溜まりみたいなものが出るのかなと。
そういうのはHEROさんがおっしゃるんですか?
そうですね。ここは「Ja」とか「Cha」の方が良いみたいに言われて、最初は僕も「Cha???」って(笑)でも徐々に意味が分かるようになってきました。
アカペラでよくある、パターンにとらわれていないということですね!
そうですね!HEROさんはサウンドを映像というか「音像」としてイメージしていて、それを表現するのに適切な子音と母音をあてるようになった。それがHEROさんと出会ってからの僕のアレンジの変化ですね。「(スキャットで)何と言っているか」ではなくて、「聴いてどういう印象を受けるか」を考えるようになりましたね。
生の音、ライブの大切さがよりわかる気がします。
同じアカペラ・同じ事務所でも音作りが全然違う
HEROさんと西村社長は、音作りの考え方や手法が全然違うんですよ。HEROさんはmaximum、つまりどれだけ大きい声を出せるかから考えるんです。造形物にたとえると、ツギハギの段ボールでもいいからとにかくデカくてインパクトがあるものを作る。
なるほど。
一方、西村社長はminimumに重きを置く人ですね。厚み数センチの彫刻画の板に、奥行きが何kmもあるように見える線路の絵をどう彫るか、みたいな考え方です。ザビエルズのサポートをやった時にこの両極端な考え方に触れたことで、選択肢や視野が広がったのかなと思いますね。
同じ事務所に所属していても、グループによって音楽の方向性が違うんですね。
ザビエルズの曲のアレンジは西村さんが書いたんですか?
初期は僕が書いてました。でも僕が抜けたあとはほぼGottiじゃないかな。
チキガリの前澤さんから、(チキガリでは)西村さんが耳コピをしていたという話を聞いたのですが。
ザビエルズでは僕やGottiが書いた楽譜を西村さんが見て「原曲のこの部分が欲しいんだよね」みたいにアドバイスするというのはありました。西村さんが手がけるバンドはオリジナル曲がほぼなくて、カバー主体なんですけど。
Rockapellaとオールディーズでできてるようなところがありますよね。
西村さんは原曲をすごく聴き込んでいて、「原曲の匂いがどれだけ出るか」をとても大事にします。アレンジには色々な考え方があって、シュガーズなら「原曲をどれだけシュガーズ色にできるか」と考えるんですけど、西村さんは原曲をリアルタイムで聴いていた人が「私が聴いていたのと違う」とならないように、あの時の感じ=”匂い”を必ず感じてもらいたいという音作りなんです。
その両方をIWAjIさんは肌で体験しているわけですね!
ありがたいことですよね。
NESTが編み出した「良いライブ」の形
NESTのライブ作りとして、MCや構成を大事にしていることはよく聞くんですが、実際大事にしている伝統みたいなものはあるんですか?
そうですね。まず浮かぶのは、「うまい/おもろい/かっこいい」の3拍子が揃ったものが売れる、どれが欠けてもダメ、ということ。その中の「おもろい」にあたるという意味でMCを大事にしてるのかなと。
なるほど!
あと、ライブ全体の「波」をすごく意識してます。NESTのライブは2ステージ構成で、ほとんどの場合、2ndステージの半ばからやや後ろぐらいに来るバラードが一番の聴かせ曲。で、最後はアップテンポでパッと終わる。めちゃくちゃ色々試した結果、この形に落ち着いたという話を聞いたことがあります。
試行錯誤の結果、「良いライブ」の方程式ができあがってきたんですね。
そうですね。そのためにどんな喋りや選曲をするのか。例えば、1曲目がアップテンポで2曲目がバラードの時。最初元気にバーン!と歌った直後「(テンション低く)どうも…」では変じゃないですか(笑)
そうですよね(笑)
でも次のバラードの曲紹介の時は落ち着いたテンションにしなければいけない。ならば、MCの中で「アドレナリンの曲線」を描いて、お客さんが1曲目の余韻を切らず、でも次の曲に入りやいような喋りをする。
なるほど…!
他にも、アップテンポが続くと(お客さんが)疲れるからゆったりした曲を挟む、バラードが続く時は退屈させないよう曲間で面白い話をする、みたいに構築して、さっきの「2ndステージ後半のバラード」の前でしっかりした話をする。しっかり曲を聴いてもって、「泣ける時間」を作る。でも最後は明るい曲で「ワー!楽しかった!」で帰ってもらう、というのがNESTの概ねの「型」です。ライブの後の反省会はしゃべりの反省が結構多いんです。
よく聞きますね。終わった後はMCの反省会だと。
そうですね。例えば、若者言葉や間違った日本語を使わないようにします。「さっきなんで”ヤバみ”って言ったの?」みたいな反省会ですね。年配の方が見た時に「?」と思わせてしまうと、その時点で距離ができちゃう。「あえて若者言葉を使ってます」なら良いけど、無意識に出ちゃうのはマズいと。
確かに!すごく大事なことですね。
1つのライブを映画のように作られているのかなと感じました。ライブ自体が作品となっているのかなって、すごく興味深かったです。
シュガーズでは生もの感、ライブ感を重視してるけど、NEST全体としてはステージをショーアップしていますね。学生に限らずプロのライブでも、MCが休憩時間状態になるパターンってあると思うんですけど、うちは基本的にそういう考え方ではないかなと。
無観客ライブで画面越しのお客さんにどう楽しんでもらうか
最後にお聞きしたいのですが、今対面でのライブが難しい状況で、無観客の配信ライブをして何か意識が変わったことはありましたか?
そうですね~、あまり変わってはいないのかな?どれだけエネルギーが飛ぶかということなんですけど…
画面越しであっても、いつも来てくれているお客さんに向けて歌う気持ちは変わらないということでしょうか?
そうですね。違いとしては、生のライブだとお客さんが自分の視線や焦点でカット割りを決められるけど、配信だとカメラの視点だけなので、立ち位置を多めに変えてみたりとか、映り方への意識はしていますね。あと、自分たちのテンションを保つのが難しいです。
お客さんのリアクションが見えづらいですからね。
だから、もちろん画面越しのお客さんに楽しんでもらえるようにするんですけど、メンバー同士でテンションを上げ合うような流れにすることもあります。よく「楽しんでないやつを見ても楽しくない」って言いますよね。
そうですね。
僕としては「自分が楽しくなくても人を楽しませるのがプロ」という想いもあるので、自分たちが楽しければ良いとは全然思っていないんですけど、でも配信の時はそれも1つの手段としてやっていかないと、どうしてもテンションが落ちてしまう時もあるので。
そうですよね!お客さんが目の前にいなくても楽しませる方法を色々考えてらっしゃるんだなとすごく感じました。今日は貴重なお話がたくさん聴けてすごく良かったです。本当にありがとうございました!
ありがとうございました!
ありがとうございました。あっという間だったな~(笑)
またぜひお会いした時にお話をうかがいたいです!
ぜひ!よろしくお願いします。
おわりに
IWAjIさんはお忙しい中、2時間近くにわたるインタビューに答えて下さいました。本当にありがとうございました!これからのシュガーズとIWAjIさんの活躍にぜひ注目してみて下さい!
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