2020年10月に発足したアカペラの歴史をまとめるプロジェクト「Harmory-History(略してハモヒス)」ですが、先日、RAG FAIRの元メンバーでありアカペラ内外問わず幅広く活躍されている「ボイパのおっくん」こと奥村政佳さんに記念すべき最初のインタビューをしてきました!
そのインタビューの内容を、全4回に分けてお送りしていきます。
いよいよ最終回第4回の本記事では、皆さん興味深いボイパについてや、ハモヒスへのメッセージをご紹介いたします。
本記事は第3回の記事の続きとなっておりますので、まだお読みでない方はそちらを先にご覧ください。
目次
「ハモネプ」は言わば「アカペラビッグバン」
話は戻る感じになるんですが、ハモネプでまずアカペラっていうのが日本で広がって行って、そこからRAG FAIRとして芸能界でいろいろ活動されてきたと思うんですけど…
ハモネプ前に比べてハモネプ後は日本のアカペラが変わりましたか?
日本のアカペラの歴史の中で一番変わったんちゃう?その瞬間に。
やっぱりそうなんですね!
いろんなダンスとかカルチャーもそうやけども、やっぱどっかでボンっとなる瞬間があって、知名度というかメジャーというか…
はい。
まあサッカーのJリーグも一緒やもんね。やっぱJリーグの前と後だとさ、「へー、サッカー部?」みたいなところから一気に世界が広がったのと一緒で…
卓球の福原愛ちゃんが出てくる後と前とはやっぱ卓球のイメージって全然違うやろうし。
なるほど!
そういう意味ではそこが一番歴史上は変わったんじゃないかなっていう感じ。人口爆発やもん、あそこで。アカペラ人口爆発です。アカペラビッグバン。
そうそう(笑)
やっぱりそこからどんどんアカペラサークルとかも増えてきた感じですか?
それまでホンマに陰に隠れてたからね、アカペラっていうのは(笑)
合唱って言ったらイメージつくけどアカペラっていうと更にイメージもつけへんみたいな。
アカペラやってるって言ってもさちょっとさ、冷静に考えればちょっとさ、変やん。
「アカペラのコンテンポラリーバンドやってました!」っていうならいいけど、「アカペラやってました!」だとさ、ね。
確かに。
「何やってんの?」って言われたら、「ラケット振ってまーす!」みたいな
素振り(笑)
ジャンルとしてまだ確立していなかったって事ですよね。
全然!もう、全然よ!
じゃあハモネプが終わってからどんどんアカペラという言葉が浸透してきて。
もちろんそうだろうね。
ボイパとかもそうですよね。
俺、商標登録しときゃよかったなって思うもん(笑)
笑笑
日本ではボイパは通じるけど海外では全く通じなくて、ビートボックスっていうのが主流だっていう風に、ヴォーカルパーカッションとかボイスドラムっていうのも世界的にアカペラ界隈でしか聞かないらしいですね。
だからずっと・・・酒井さん(ゴスペラーズ)とかはさ、もうずっと昔からHBBって言ってたよね。
ヒューマンビートボックス!
そう。もちろん外国人としゃべるときはヒューマンビートボックスプレイヤーっていうもんね。
そういえば、Lyn(りん)さんも海外行ったらボイパが通じなくてビートボックスって言うんだって初めて知ったって言ってましたね!
でもほんとに、テレビで出たからボイパは広まったけど、それまではいわゆるボイパプレーヤーはおそらく…。当時は、嘉一郎さん、末松君、俺、関東やとそれだけやないか?で、関西・・・Phew Phewはだから。。CHAVOさんおったね!
早稲田大学アカペラサークルSCS OB。元トライトーン、現在The Idea Of Northや鱧人に所属する世界的VPist。
・末松卓
慶應義塾大学アカペラサークルKOE OB、ハーモウェル講師。Gorilla所属。
ある意味、そういう意味でこれ行けるっていう。。。
そんな深いところまでは見てへんからさ、ほんとに若気の至りやけどさ。
これやったら俺いけるなあって思った記憶があるわ
研究と試行錯誤を重ね、自分のボイパスタイルを確立していった
当時記憶に残ってたのは、ボイスパーカッショニスト中でもおっくんの音って基本のドラムセット以外にもコンガとか多彩な音を表現されてたと思うのですが…ああいった引き出しは、直接楽器の音を聞いて自分の口で出すように練習されたんですか?
そうよ。だからもうよく覚えてる。車でずっと練習してたもん。多分コンガは大学の3年か4年。車に乗りながらいろんな音をやってる時にあ、これ行けるんちゃうかなって。
車の中で「あ、きたー!」と思ってやってた記憶があるし、おそらくそれは多分世界の奏者の中でも演奏にちゃんと口でコンガ入れたのが俺が初めてだと思う。
音源では、おっくんのボイパは他の方より多いチャンネル数でレコーディングしてるのかなって思ったりもしました。
基本的に俺の趣向としては、あんまり分けずにどんだけまあ、一本で再現できるかっていうほうが俺は好きよね。だから『I RAG YOU』なんかはそれやと思うんだけども、幾見さんが分けるのが好きやからそこのせめぎ合いというか。
おれは分けたくないし、幾見さんは分けたいしみたいな。
なるほど。
ただ、今思えばその分けるっていうのをすごく言うてはって俺は特にライブなんかは一本でやってかなあかん中で、バスドラの帯域はかなり下に下がった。だから打ち方は変わったよね。幾見さんに会ってから。
それまでいわゆるロータム的とハイタム的な差ぐらいだったやつがだんだん自分の中で分離できるようにはなったし、それはなんかすごく言われた記憶はある。
幾見さんは皆さんに言ってたみたいですね。高低差をつけないとダメだっていう。
音楽として気にしてるみたいで。
幾見さんはやっぱりミュージシャンやからね。アカペラってよりもミュージシャンやから当然な話で。最初はすごくシンバルを分けたりするのも抵抗があったけど…まあまあ、今はね!
普通に分かるよね。
だから何として考えるかよ。アカペラとして考えるのかJ-POPとして考えるのかっていう所で、多分違ってきてて。だから最初の最初は本当その辺を考え方を変えるのもやっぱりなかなか大変やったし…。
特に『七転び八起き』(RAGFAIRの曲)で楽器が入ったあたりでも、正直頭はまだついていってなかったよね。それで訳わかんなくなって坊主に…。(笑)
あはははは(笑)
途中から楽器が入ったり、まあアカペラにもちゃんと戻ってきたりとかしながらこのモチベーションとかってどう思ってたんだろうなって…。
だから、『七転び八起き』のソロは…。
ジェフ(Rocakpella)みたいな感じ。
アメリカのアカペラグループRockapellaのメンバー。Vocal Percussion担当。プロデューサーやエンジニアとしても活動する。喉にマイクを使用した世界で初めてのVocal Percussionist。ドラム音の間に声を混ぜる独特の表現も魅力である。
そうそうそう、まさにジェフ。まあ、そうせざるを得ないわけやん。だからそれまではドラムに似せるっていうことがミッションだったけれど。
今度は人間がやってるってことを表現することがミッションになってくるわけで。
それすごい感じました。
あとはジェフが気が狂っって打ったらどんな感じかなぐらい(笑)
俺もヤケクソやからあのへん(笑)
笑笑
まああの特にね。ドラムに似れば似るほどドラムでええやんっていうジレンマ?
ハイハイ!分かります。
ライブではいいけど、CDは・・なんやねん、みたいなね。ところで言うとそういう風なアプローチもあるのかなっていう。
で、話を戻すと、、、音色は出来るだけチャンネルを分けないように。例えばバスドラとスネアとハイハットが同時に出るように何となくアプローチを工夫したりとか。
うんうん。
例えば『恋のマイレージ』のサーフの部分ね、あーいう打ち方をする人はいなかったはずで。その辺はそういう音楽を作っていく中のせめぎ合いで、じゃあ、これは、あれはみたいな感じでやってたと思う。
で、ライブのさあ、『DVDラグフェアーツアー2003』でボイパソロやってるやつ。
dolphin(ドルフィン)でしょうか?
そうそうそうそう。あれとか、マイク7本使ってるけどあれもパフォーマンス半分で。だからあの辺音響チームともどうやって音を拾っていくか、LOWを出していくかっていうのはすごく試行錯誤して
特に初期のライブは確かね、ここにマイクを一個仕込んでいるはず。マフラーの下に。
本当にジェフですねw
そう。ピックアップマイクを仕込んでやってみたりしたけどなんかあんまりいい結果出なかった気がする。雑音というかガサガサさ。
で、そのうち無声と有声のいいとこ取りをするよね。何しろ生音がでかく出てたっていうのは初期のレコーディングやライブパフォーマンスにはいい影響やったよ。
だってむりやり拾わんでええねんもん。
ほー!!
出てる音を大きくするっていう作業だから。
声と一緒のアプローチでね。専属のPAおらんかったからね。最初はさ。
そうなんですね。
まあ、もちろん大きいツアーにはいるよ。
でも、PAはいつも同じ人連れて歩いてますみたいな感じはなかったから、RAGって。
ちなみにさ。多分俺、音の割には飛沫は少ないと思うよ。
あっ!以前ROTTでお会いした時にティッシュを口の前に置いて…
やったか(笑)
とにかく音量がすごかったです(笑)
これって、空気を出さずに口の中で成立させてるってことですよね。
多分そう。だから効率は良くなるよね。
嘉一郎さんも言ってたやつだな。嘉一郎さんも特徴的な出し方ですけど、本当に生で聞いても音が大きいんですよね。で、やっぱり自分の口の効率を良くする為、どれだけ疲れず音もでかくするようにっていうのをすごい研究したみたいですね!
単純に疲れるもんね。プロとして。3時間半もライブやっててさ。5分やって疲れてたら持てへんで。
笑笑
一つ質問があるんですけど、当時おっくんは音色を研究されていたと今お話をお伺いしましたけれども、何かトレーニングしたり、ボイトレを受けたりされていたんでしょうか?
ボイトレはメンバーが受けるから一緒に受けとったけど、まあ、へたくそやったよな(笑)
音感はあるけど発声としては全く違うというか、腹筋は使うねんけども瞬間の腹筋とかさ。
ボイパって全く違うやんか。
肺活量とか凄くいるかなとは思いますが…
どうなんだろうね。おそらく嘉一郎さんの理論で言うとスペック的には、じゃあそんなに馬力はいるのかっていうとおそらくそうじゃなくてどう使うか…
だからイチローと同じやで。イチローも筋トレせえへんやんか。イチロー…筋トレ…(検索中…)
あーホントですね!ウェイトトレーニングを一切やめたって書いてあります。
もちろん、何もない状態からある適度やるためにはそういうことが必要やけど、まあ、多分デビューするまでに4年すでにボイパやってるわけで。素人としてはかなりやってるはずだから、そっからじゃあ改めてっていうのはそんなに必要なかったかもしれないのかな。
作るべき筋肉はおそらくもうついていて…
一定数鍛えた後はもうその中でいかに効率よく能力を発揮できるかっていことですよね!
そう!だろうけど意識はせえへんよね。意識するとしたら、屋外のステージで向かい風やわー、冬はめっちゃ乾くわー、いややわー、どうしようーみたいな。
その辺は場数の話になってくるよね。どうリカバリーするかね。
そうなんですね!
一方で、ドラムのフレーズで1回だけさ、ボイパやってたらドラム習いに行った方がええやろって話にデビュー当時になって。ドラムしながらボイパ出来たらかっこいいんちゃうとか、
いろんなさ、ネクスト展開を自分でというよりも事務所のマネージャーとかにそそのかされて。ドラム一回でやめたもんね。なんで口で出来るのに棒使ってやらなあかんねんっと思って(笑)
笑笑
「ストレスたまるわー」とか思ったりしたけど。まあまあそのいわゆるドラムの本とかにあるような、奏法というか、あ、こーやってやってんねんなとかってね。
確かに表情が付くというか。
逆に言うとさっきのそのジレンマに行きつくわけで。
あーはい。声らしさを残すというか。
ドラムと同じことをやってもドラムは超えないからね。
なるほど!
やってみるのはもちろんね、いいけれども。
じゃあ、それを目指してもしょうがないっていうのはあったりする。
無声ボイパは「マジックペン」、有声ボイパは「水彩絵の具」
有声のボイパがいいなと思うのは、特に無声と違って空間を埋めれるからいいよね。他のメンバーが息継ぎしている時とか、、、なんていうかな。声の帯域じゃないところ出せたりするわけだし。
数kHzっていうシャカシャカシャカシャカとか、下は数10Hzとか人間の声じゃなくて重低音も出せるわけやし。
へー!
例えばベースの息継ぎしている間もボイパは基本的には鳴っているし、そういう意味ではアカペラの弱点のところを補えるパートではあるし。
それが有声だと更にサウンドとしてはプラスに寄与する部分が大きいのかなという気はするかな。
僕ボイスパーカッションやってないので詳しくないんですけど、やっぱり違うものなんですか?
役割というか、こういう時は有声のほうがいいとか無声のほうがいいとかっていうのってあるんですか?
これ極論かもしれへんけど、無声がマジックやったら有声は水彩絵の具やと思う。
なるほど!
これちょっと名言出たで!
笑笑
例えば線書いてもさ、マジックの線の書き方と水彩絵の具ってさ、水彩絵の具は太さも色の薄さも混ぜることも結構出来るけどマジックってやっぱりなかなか…。
はっきりは書けるよ!はっきり書けるし、メリハリはあるし、遠くから見えたりもするかもしれんけど、まあ、有声は自由度はあるのかなあという気はするかな。
淡いというか。色も変えられて。
そう。いろんなアプローチができるかな。可能性の幅が広いと思う。
すごい勉強になります。
知らんで。俺が言ってるだけやからな。(笑)
水性マジックのにじむ感じが、他の音になじんで寄り添っていく感じの音作りということで!
そんなこと言ってると油絵具も!とかいろんな事言ってくるやついそうだけど(笑)
しらんがな!みたいな(笑)
「運命のいたずらの答え合わせ」をしてみたい
最後に記事の締めとして、このハモヒス・・ハーモリーヒストリー・・歴史をまとめるという活動について何か一言いただけたら嬉しいです。
そりゃあもう、子供や孫に見せられるからうれしいよね。自分が毎回毎回しゃべらんでも。。。
たしかに!
なかなかこれをしっかりやろうって人って、カルチャーとしてね。そういう意味ではこういうヒストリーが完成していくとブームとか流行りっていうのからカルチャーに昇格していくのかなっていう感じがするよね。
ブームからカルチャー..!
だからすごく楽しみですよ。自分自身が知ってることがいろいろ出てくる中で改めて読み返すと逆に自分が知らないこともあったんだろうし。運命のいたずらみたいなのがいっぱいあるんやろうね。そう、だからその辺の答え合わせができるようで。当事者としてはさ。
すごく良い話ですね。運命的な出会いの答え合わせ。
それをまた後輩がやってるっていうね。
ありがとうございます!
最後に
今回は、奥村さんのボイパについて色々お話しを伺うことができました。
奥村さんの記事は今回で最後となります。お忙しい中ご協力大変ありがとうございました。
これからの様々なジャンルへの躍進とご活躍を心より応援しております。
ハモヒスへの協力依頼
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